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日々の仕事で疲れ果てても、学び続けなければならない
もしあなたがもっと上のリーダーを目指したい、あるいはいまの仕事で活躍し続けたいと考えているなら、継続的な学習は成功に不可欠だ。この変わり続ける世の中で、自分自身も進化し続けなければ、ライバルに後れを取るだけでなく、いま持っているスキルがいつの間にか用なしになる、などという可能性もある。
かといって、これ以上自分磨きに割くエネルギーもなく、現状維持が精いっぱいという人もいるかもしれない。それはあなただけではない。2024年の調査によると、労働者の半数以上が1日の終わりに「精根果てた」と感じている。それは、日々の期待に応えることで疲れ切ってしまうというだけでなく、将来の成長に関わる重要な活動に取り組む余力がないという意味なのである。
エグゼクティブコーチとして多くの有能なリーダーを見てきたが、常に仕事に追われているリーダーにとって、残業が肉体的負担であるのと同じように、能力を最大限に発揮できないことは精神的苦痛である。しかし、そのようなリーダーにとって、自分をコンフォートゾーンから連れ出し、自分の価値観に沿った意義があり、自分の「記憶保持スタイル」(後述)に最適化された学習こそが、活力を取り戻すうってつけの方法である。疲れ果て、あるいは仕事に追われている時でも学習を続けるコツを5つ紹介しよう。
自分の学習能力に関する思い込みを疑う
筆者のクライアントだったある上級幹部は、世界各地にメンバーがいる、出来立てのチームを率いていた。チームをまとめるために頻繁に出張し、疲れ果てていた。この名声あるリーダー職に就いたことに興奮しながらも、自信を失い、内なる批判の声に、このような状況でリーダーが務まるのかと自分を疑っていた。彼は、この内なる批判者を遠くから観察することによって、「飛行機がすでに飛んでいる間に操縦を学ぶことはできない」という固定観念に縛られていたことに気づいた。
疲れ切っていると、それが自分のすべてのように感じ、考えや信念は自由に決められることを忘れてしまう。この状態では、「疲れた」と嘆くたびに、「疲れている時に何かを学ぶのは不可能」だと脳に言い聞かせていることになる。それよりも、判断を交えず、取り除こうと思わずに疲れを観察し、疲れという制約があってもできることはないか、好奇心を持つようにする。疲労に居場所をつくると、意識的に対応できるようになり、疲労状態に抱いていた、いらぬ先入観を前向きに覆すことができるのだ。
筆者のクライアントだった上級幹部は、自分の思い込みを疑った結果、実際には確信を持って部下を指導し、それと同時に、学習を通じて能力を磨くこともできることに気づいた。まもなく彼の活力に変化が見られ、学習する時間を確保しようとしたり、グローバルチームのリーダーシップに関する記事を読んだり、予定されていた現地視察に向けて、エグゼクティブプレゼンスを向上させるために動画を視聴したりするようになった。
直近の問題を解決できるテーマから始める
残高が複利効果によって効率的に増えていくのと同じように、すでに知っていることややっていることをベースにすると、学習意欲は高まりやすい。緊急性や重要性を感じないテーマに取り組んで苦労するよりも、まずは既存の課題に関連したテーマから始め、いまある知識を広げると早々に勢いをつけられる。
筆者がコーチングをしたあるクライアントは、2023年はずっと仕事に追われていると感じていた。最近受けた360度評価で、自分が周囲から「決断が遅い」と見られていることがわかった。当初はそのフィードバックに抵抗を感じていたが、そこから学ぶことにしたところ、大きな気づきを得た。それは、決断を避けていたために仕事がどんどん溜まり、それが原因で、常に仕事に追われているように感じていたのではないか、ということだった。