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日常業務に忙殺され、創造的な活動の時間が取れない
実験的な取り組みを立ち上げたり、イニシアティブを展開したり、ハッカソンを開催したり……部下のイノベーションを促進するためにリーダーにできることは数多くある。ただし、どのような取り組みにも、現代社会ならではの職場の現実の壁が立ちはだかる。誰もが多忙を極めている、という現実である。
労働者はコミュニケーションの海で溺れそうになっている。ある調査では、メールのやり取りに週に9時間近く、会議に7.5時間を費やしている人もいた。労働時間はいちだんと長くなり、忙しさをステータスシンボルと捉える人もいる。
こうした要因が、イノベーション文化を破壊しているのかもしれない。
まず、社員がメールや会議や業務に忙殺されている状況で、何かを新たに創出したり、学んだりするための時間を十分に確保できるはずがない。ある調査では、業務遂行の時間を十分に与えられていない従業員は、イノベーションに苦戦する確率が3倍以上高いことが判明した。
過剰な仕事を抱えていると、イノベーション文化に必要な創造的なアイデアを思いつく可能性も低くなる。常に目の前の作業に追われていると、タスクに集中していない時に経験しやすいとされる「アハ体験」の瞬間を逃してしまう。休息の時間が少なければ、創造的な思考をしたり、散歩によってアイデアを刺激したりする時間も少なくなる。さらに、過剰労働に伴うストレスが脳の創造力に悪影響を与えることも、研究によって示されている。
『ニューヨーク・タイムズ』紙の「ニュースルーム開発・サポートチーム」で副編集長を務める筆者も、まさにこうした課題に直面している。ニュースルーム開発・サポートチームは、編集者や記者が記事を作成する際に使える最新ツールやスキルを学ぶ支援をする部署だ。スケジュールが目いっぱい詰まっている時に、新しいアイデアを取り入れる余裕がないことは、我々もわかっている。仮に何かを学ぶ時間を多少確保できたとしても、押し寄せる「やることリスト」に気を取られてしまうことだろう。
同時に、日々の業務が魔法のように消え去ることもありえない。ビジネスにおいては、日常業務をきちんとこなしていくことが不可欠だ。従業員が必要な業務とイノベーションのバランスを取れるよう、リーダーは何をすべきだろうか。