出社再開を求めるリーダーが誤解していること
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サマリー:従業員の出社再開を求めるリーダーの試みは、職場のつながりを強化するという目的に反し、生産性低下や人材流出を招く可能性がある。社会的なつながりは重要だが、出社の強制が必ずしもその結果を生むわけではない。... もっと見る職場でのつながりの醸成に関する議論には、欠けている視点がある。 閉じる

出社再開が従業員のつながりをもたらすと考えるのは見当違い

 多くの労働者が、自分と仕事、同僚、上司、雇用主との間で緊張した関係や亀裂を経験している。そのことは静かな退職大退職時代(グレート・レジグネーション)、雇用主と被雇用者の契約の破棄などが証明している。

 こうした亀裂を食い止めようとしているが、見当違いな試みの一つとなっているのが、多くのリーダーが要求している、従業員への物理的な出社の再開である。週3日でも、月6日でも、そのメッセージは明確だ──あなたたちにオフィスに戻ってほしい、それが人々のつながりを維持する唯一の方法のはずなのです。

 その根拠は、従業員同士がつながっていれば、より大きなイノベーションやコラボレーション、エンゲージメントを生むという考え方にある。確かに、強固な社会的なつながりはそうした成果につながりうるが、出社の再開を求めることが必ずしも意図した結果をもたらすわけではない。実際には、私たちが目の当たりにしている通り、出社再開を強制されると従業員の生産性が低下し、多くの人が出社を拒否し続けて最も勤続年数の長い従業員を失う場合さえある。

 既存の研究を調べたところ、職場でのつながりに関する議論には重要な証拠が欠けていることが示唆されており、それが組織やリーダーを迷走させているのだ。

職場での4つのつながり

 職場でのつながりは一般的に、同僚との対人関係を優先する一元的なものと考えられている。確かに、社会的なつながりが極めて重要であることは研究でも示されている。しかし、最近実施された共同研究でニューロリーダーシップ・インスティテュート(NLI)の研究チームとテクノロジー企業のアカマイは、職場におけるつながりが相互に関連する4つの重要な要素から構成されていることを明らかにした。すなわち、従業員と同僚(colleagues)、リーダー(leader)、雇用主(employer)、役割(role)とのつながり「CLEAR」だ。

 職場でのつながりに関するより正確で繊細な見解は、出社再開の議論を超えて、従業員が献身的に、意欲的に、生産的に働ける職場をつくり出すための計画的な人材戦略の策定に影響を与える。CLEARのつながりを考察することは、組織の亀裂を食い止め、傷口の治療を始めるための正しい方向への一歩であり、すでにうまくいっているものを持続して、さらに拡大するための一歩でもある。

同僚とのつながり

 あなたのキャリアの中で、心から信頼して好意を持てる人々と働いた時期を思い出してみよう。一緒にいることが楽しいだけでなく、互いに協力し、支え合っていただろう。いまあなたが思い出していることが、まさに同僚とのつながりだ。