-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
-
PDFをダウンロード
第3のリスク・マネジメント革命
1970年代、企業戦略の分野に革命が起こった。M&Aブームがきっかけとなって、M&Aに特化した金融や法律、戦略コンサルティングといった新しい職業が誕生した。
企業統制に積極的かつ効率的な市場が形成されると、最も魅力的なビジネスを所有することより、競争優位のあるビジネスを所有することに焦点は移っていった。株主に利益をもたらさなければ、いかに急成長事業や高収益事業であろうと、プレミアムがつけられて売却された。逆に、企業に競争優位をもたらすものであれば、平凡な事業でも継続されることが当然とされた。
同時に、金融サービス会社がリスクを把握したり、売買したりする方法にも革命が起きた。73年、フィッシャー・ブラックとマイロン・ショールズがかの有名なオプション価格モデルを発表すると、リスク移転を評価することが可能になった。
コンピュータの演算処理能力が飛躍的に向上すると、オプション取引にも似た金融契約の一大市場が生まれ、金利や信用リスクなど、あらゆる金融リスクが移転できるようになった。その後まもなく、さまざまなコモディティを扱う同様の市場が形成された。
そしていま、これら2つの革命が融合し、リスク・マネジメントに第3の革命が起きようとしている。
基本的な業務、財務、マーケティング、戦略などにまつわる選択においては、金融市場のリスクを厳密に定量化することを伴う。たとえば、このM&Aを進めるべきか。垂直統合を緩めると、どんなメリットにあずかれるのか。自社生産か、それともアウトソーシングか。競合他社の出方によって製品需要はどのように変化するか、あるいは、中国経済が低迷すると減速するのか等々──。
このような疑問への答えは、これらに伴うリスクは自社がそもそも負うべきものか否かによって、いっそう左右される。