-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
-
PDFをダウンロード
ゲーム理論ではライバルの動きはつかめない
ビジネス・リーダーであればだれでも、自社の行動にライバルがどのように反応してくるのかを予想することが、戦略上の意思決定において決定的な要因であると述べるのではないか。しかし、ライバルの出方について、どれくらい真剣に研究しているかと問われれば、たぶん答えに窮することだろう。
マッキンゼー・アンド・カンパニーが最近実施した調査によれば、戦略立案者の3分の2が、予想されるライバルの反応を戦略上の意思決定に勘案すべきであると固く信じている。
しかし、スタンフォード経営大学名誉教授のデイビッド B. モンゴメリー、バージニア大学ダーデン経営大学院教授のマリアン・チャップマン・ムーア、そしてノートルダム大学メンドーザ・カレッジ・オブ・ビジネス教授のジョエル E. アーバニーの調査[注]によれば、これを実行しているマネジャーは10人に1人より少なく、またこの先できそうなマネジャーも5分の1に満たなかった。
このような言行不一致が生じるのは、ライバルの行動を説明する唯一の厳密なフレームワーク、すなわちゲーム理論を現実の世界に当てはめてみても、思うようにいかないからである。
まずゲーム理論は、すべての参加者がゲーム理論の基本原則に従うことを前提としている。そもそもこのような前提がおかしい。しかも、ライバルがさまざまな選択肢を持っている時もあれば、ライバルがどのような基準で選択肢を評価するのかわからない時もあるし、ライバルが多数存在し、それぞれの反応が異なる時もある。このような場合、ゲーム理論のモデルは役に立たない。
戦略立案者が、その場しのぎの予想やウォー・ゲームによるシミュレーションを用いたところで、ほとんど恣意的なものにすぎない。たとえば個人的な思い込みや隠れた意図といった定性要因が予測プロセスに入り込むと、その結論の信憑性を損なう危険があり、またシニア・マネジャーの直感に反する結果になる可能性もある。
我々は数年間にわたり、マッキンゼーの力を借りながら、競争行動のモデル化に取り組んできたが、その過程で、数多くの企業と一緒に、戦略行動にライバルがどのように反応するのかを予測した。