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ギャンブルも様子見も
賢明な戦略ではない
きわめて不確実性の高い事業環境では、何が優れた戦略に貢献するのか。
未来を創造しようとして、ギャンブルに出るビジネス・リーダーもいる。たとえばイーストマン・コダックは年5億ドルをかけて、写真の撮影、保存と鑑賞方法を一変させる、さまざまなデジタル製品の開発を進めている。一方ヒューレット・パッカード(HP)は年5000万ドルを投資し、これはコダックのビジョンとは相容れないものだが、家庭用写真プリンターの開発に取り組んでいる。
このような業界地図を書き換えるような戦略について、マスコミが書き立てるのは、むろん巨万の富を生み出す可能性があるからだ。しかし冷静に現実を見れば、このような戦略を成功させるために必要とされる業界ポジション、資産、リスク志向を持ち合わせていない企業が大半である。
リスクを嫌うビジネス・リーダーは、あちこちに少額を投資してヘッジを図る。たとえば新興市場で成長機会を探すに当たり、一般消費財メーカーの多くが、オペレーションや流通を提携によってまかなう。しかし、このように限られた投資によって、これら新興国で事業展開できるのか、それとも失敗するだけなのか、その見極めは難しい。
一方、市場の変化に迅速に適応するために、柔軟に投資することを好むビジネス・リーダーたちがいる。しかし柔軟性を確保するには、けっこうなコストがかかる。さらに、先が読めるまで多額の投資は控えるといった、「様子見戦略」は、ライバルにチャンスを譲ることにもなりかねない。
不確実性の高い状況において、ギャンブルに打って出るか、リスクをヘッジするか、待って様子を見るか、ビジネス・リーダーはどのように判断すべきだろう。このような場合、オーソドックスな戦略立案プロセスはほとんど役に立たない。
DCF(割引キャッシュフロー)法を用いて、将来の見通しを立てておくというのが一般的である。また、いくつかのシナリオを検討し、カギとなる変数が変化すると、自分たちの予測にどのような影響が及ぶのかを検証することももちろん可能である。ただし、そのような分析は、いちばん可能性の高い結果を明らかにし、それに基づいて戦略を立案するという目的であることが多い。