-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
-
PDFをダウンロード
理想のリーダーを再定義する
過去半世紀、有能なビジネス・リーダーが輩出される場所について、大多数の意見は一致していた。たとえば、ゼネラル・エレクトリック(GE)やプロクター・アンド・ギャンブルのような事業会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーのような強力なコンサルティング会社、ハーバード・ビジネススクールやペンシルバニア大学ウォートン・スクールのような名門ビジネススクール、そして軍隊などである。
しかし、世界は変わった。市場も労働力も、グローバル化と多様化が急速に進んでいる。変化はあまりに目まぐるしく、一人のリーダーが、世のなかの動きすべてにキャッチアップできるはずもなく、一歩先を行くうえで不可欠なイノベーションを担うこともままならなくなっている。また、意思決定は組織全体で広く分担されるようになり、社外とのコラボレーションも要求される。
だからこそ、我々が抱いている「理想のリーダー像」について見直すことに意味がある。つまり、理想のリーダーに必要とされる特性を、どこで、どのように獲得するのか、あらためて考えてみるべきといえる。それは、けっしてハーバード大学やGEのクロトンビル研修所といったところではなく、一般にはなじみのない経験を通じて得られるものだと気づくかもしれない。
ハーバード・ビジネススクール教授のリンダ A. ヒルは、リーダーシップを多角的に研究している。1990年代初め、彼女が中心となって、MBAの必修科目としてリーダーシップ講座を開発した。
またヒルの研究は、初めてマネジャーになった人が直面する、さまざまな困難や課題に関するものであり、そのエッセンスは著作にまとめられている[注1]。その一方で、かねてから新興国経済に関心を寄せており、そのために、アルゼンチンや南アフリカから、インドやアラブ首長国連邦まで、世界規模の研究を続けている。
彼女は現在、ハーバード・ビジネススクールの幹部研修コース「ハイ・ポテンシャル・リーダーシップ・プログラム」、およびリーダーシップの理論と実学の溝を埋めることを目的とした調査プログラム「リーダーシップ・イニシアティブ」の担当教授である。
HBR誌のインタビューのなかで、ヒルは、今後の半世紀でリーダーシップの性質はどのように変わるのかについて予言した。そして、「背後から指揮する」と「集合天才[注2]としてのリーダーシップ」という2つの概念によって定義されるだろうと述べる。なお本稿は、数回にわたるインタビューを編集したものである。
時代の要請に応えるリーダーはいったいどこにいるのか
HBR(以下色文字):我々は、間違った場所でリーダーを探しているのでしょうか。