2日間の白熱した議論

 創造性は、常にビジネスの要であるにもかかわらず、これまで最優先課題として扱われることはなかった。役に立つ新しい何かを生み出す能力、すなわち創造性は、新しい事業を興し、グローバル企業に成長した後も一流企業であり続けるという意味において、まさしく起業家精神(アントレプルナーシップ)の本質といえる。

 創造性が軽視されるのは、あまりに抽象的で、見ることも触ることもできないため管理不能である、あるいは、それに注力するよりも業務プロセスを改善したほうが早いと思われているからだ。

 その一方、人類学から神経科学に至るまで、さまざまな学問分野において長い間取り組まれてきたテーマであり、経営研究家たちの間でも関心を集めてきた。それゆえ、創造性に関する研究は山ほどあり、あわただしい日々の管理業務から離れ、その疑問を追求したいと思えば、ビジネスマンでも利用できる。

 創造性はこれまで、一部の思慮深いリーダーの知的関心事だったが、幸いなことに、いまや多くの人たちにとって喫緊の課題として浮上している。世界はいま、イノベーション主導型経済へ大きく傾きつつある。また、多くの人たちが優れた執行能力を身につけており、新しい製品やサービスのライフサイクルも短くなっている。

 このように、優れたアイデアをどれくらい生み出せるのかを競うゲームへと変わったことで、創造性の研究者たちには、的を射た疑問が投げかけられるようになった。すなわち、その研究にどのような意味があるのか。それはどれくらい役に立つのか。あるいは、創造性に依存するビジネスに身を置くリーダーたちにとって、意思決定の拠りどころになりうるのか等々──。

 我々は先頃、理論と実践を結びつける目的で、ハーバード・ビジネススクールで2日間のセミナーを開催した。このセミナーには、デザイン・コンサルティング会社のIDEO(アイ・ディ・オー)、革新的な電子ペーパー技術の開発に取り組むEインク、インターネット業界大手のグーグル、製薬業界大手のノバルティスなど、創造性が成敗を左右する組織のビジネス・リーダーたちが参加した。

 会場では、一流の研究者たちが、最新の研究成果を発表した。組織における創造性の役割に関心を抱く総勢約100人が一堂に会し、白熱した議論を繰り広げた。我々はこの2日間、ビジネス・リーダーシップの新しい課題が浮き彫りにされていく様子を目の当たりにした。

 まず聞こえてきたのが、創造性はいっさい管理すべきではないという、マネジメントの役割への懐疑的な意見であった。インテュイットの共同創設者スコット・クックは、創造性という課題において、リーダーの存在は「役に立つものなのか、それとも足を引っ張るものなのか」という疑問を呈した。「組織に創造性のボトルネックがあるとしたら、それは決まって上部にあります」と、彼は述べている。