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社員重視か
業績優先か
社員の士気を高めながら、優れた業績を実現する──。それには、難しい手綱さばきが要求されるが、これはリーダーにとってきわめて重要な務めである。
生き馬の目を抜くようなグローバル市場において、顧客に優れた価値を提供できない限り、繁栄はおろか、生き残りすらかなわない。そのような意味で、企業は経済活動を柱とする組織である。その半面、社員たちにすれば、生活の糧を得る場であり、また社会的な性格も持ち合わせている。
ところが、リーダーたちはたいてい、どちらか一方の側面にしか目を向けない。多くの経営者たちが、資本市場からの厳しい要求のために、株主の顔色ばかりうかがっている。これでは、社員たちを幻滅させ、長期にわたって価値提供していく力もそがれてしまう。
一方、大きな市場シェアを獲得している企業、あるいは規制に守られている企業は、社員や、社風、過去の遺産を大切にするあまり、ぬるま湯から出られず、内向き思考が強まり、競争力を失いがちである。
しかし、なかには、業績と社員のいずれも犠牲にすることなく、このジレンマを解決しているリーダーたちが存在する。社員たちの熱意や貢献をうまく引き出しながら、痛みを伴う大変革を成し遂げ、将来の繁栄への布石を打っている。
例として、ディーゼル・エンジン・メーカーであるカミンズの会長兼CEOを務めるセオドア M. ソルソを取り上げたい。彼は、2000年にCEOに就任すると、すぐさま自社のミッションを明らかにし、企業理念を再確認するために、世界規模でプログラムを展開した。
カミンズは多額の負債を抱えていたうえ、ソルソがCEOに就任して半年すると景気後退が始まり、その影響を受けて、2003年上期まで逆風続きだった。主力市場の需要は72%も落ち込んだ。
そこで、ソルソ率いる経営陣は、生き残りには「大がかりな手術」が不可欠であると判断した。発祥の地であるインディアナ州コロンバスの第1号工場を閉鎖し、トラック用エンジン事業のリストラクチャリングや、大規模なレイオフにも踏み切った。