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聞く力を伸ばす4つのテクニック
職場における優れたコミュニケーターと言われて、たいていの人が思い浮かべるのは、プレゼンの得意な人だ。上手な聞き手を思い浮かべる人は少ない。実際、聞く力を育むことを目的とする講座はビジネススクールでもほとんど設けられていない。社員教育のプログラムでも同様の状況が見られる。
しかし、このような発想は間違っている。
聞き上手なリーダーがつくり出す企業文化の下では、働き手は自分の言葉に耳を傾けてもらえているように感じ、評価されているという感覚を抱き、エンゲージメントが強まる。また、上司が聞き上手だと、働き手の仕事に対する満足度と心理的安全性も高い。さまざまな研究によると、聞く力は、職場で最も重要な口頭コミュニケーションのスキルと位置づけられている。会話やプレゼンのスキルより重要と考えられているのだ。
そこで筆者は、スタンフォード大学経営大学院のMBAプログラムや、世界のビジネスリーダーや軍事リーダーを対象とする講座で、聞く力を育むことをプログラムの核に据えている。聞く力は、訓練して伸ばせるスキルであり、リーダーの地位にある人すべてにとって、状況を一挙に好転させる可能性を持っている。あなたがよりよい聞き手になりたいと思うのであれば、手始めに以下の4つのテクニックを実践してみてはどうだろうか。
テクニック1:最後まで聞く
おそらく、あなたはこれまでお粗末な聞き方をしてきたのではないか。それは、相手がまだ話している間に、次に自分が何を言おうかと考えたり、相手の言葉を遮って問題の解決策を示そうとしたり、相手が語っているのと似た自分の体験を披露しようとしたりする(「私も同じ経験があります。私の場合は……」といった具合に)というものだ。
私たちがこの類いの行動を取るのは、どうにか相手との絆を育みたいと思っている時であることが多い。また、相手との人間関係に不安を抱く結果として、そのような行動が取られる場合もある。相手との議論にどうすれば貢献できるのかについて不安を感じていると、私たちはこのように先走った振る舞いをしがちなのだ。
問題は、言葉を指し挟むのが早すぎたり、自分を会話の中心に据えようとしたりすると、会話の質が低下してしまう点にある。多くの人は、みずからのメッセージの主要な点を伝えるために1分はかかる。したがって、相手がまだ話し終わらないうちに遮ったり、聞くことをやめてしまったりすれば、相手の言いたいことをきちんと理解できないおそれがある。それでは質の高い返答などできるはずがない。
では、もっとよいアプローチはないのか。他のことを考えずに、相手の話をしっかり聞くようにすればよいのだ。