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自分の昇進のためだけに部下の支援をしていないか
筆者の元クライアントであるアイコは、グローバル企業の有望なマーケティング担当エグゼクティブだが、その職務以上の評判を得ていた。彼女のチームはエンゲージメントも生産性も高く、何より成長のスピードが速いことで広く知られていた。彼女のチームメンバーは、他の多くの人々より早く昇進していく。従業員はアイコの部下になることを望み、彼女には「リーダー・メーカー」というニックネームまでついた。
アイコの成功の大きな要因は、チームメンバーのためにアドボカシー(支援・擁護)を惜しまず、ごく自然にメンバーの成長の機会を見つけようとする傾向があったことだ。結果的にスタープレーヤーを手放すことになろうと、それは変わらなかった。このアドボカシーは昇進のためだけのものではなく、彼女は常日頃から従業員の育成に尽力していた。それがリーダーとしての評判を高めたのである。
残念ながら、多くのマネジャーは従業員が自分のもとからいなくなるのではないかという不安に駆られたり、昇進のサイクルが近づいたりした時だけ、従業員のアドボカシーに取り組もうとする。だが、そのような受け身の姿勢では、往々にして手遅れになる。慌ててチームメンバーの強みを声高に主張しても、同じことをしている多くのマネジャーと競うはめになるだけだ。
マネジャーによるアドボカシーの役割は、単に昇進の時にチェックリストを埋めることだけではなく、より広範にわたる。アドボカシーとは、チームメンバーの貢献を認めて称賛し、おのおのの取り組みを組織の目標と関連づけ、メンバーの価値を主要なステークホルダーの目にとまるようにして、常にチームの成長をサポートすることである。本稿では、企業が設定した昇進のサイクルにこだわらず、年間を通して従業員のためのアドボカシーに取り組む方法を紹介したい。
アドボカシーに対するためらいを克服する
マネジャーがチームメンバーのためのアドボカシーをためらう理由はいくつかある。第1に、多くのマネジャーは、固定的な昇進サイクルとタイムラインに基づく組織構造の中で活動している。そのため、この枠組みの外でチームメンバーの能力を開発する方法を見つけようとせず、すでに認識している昇進の機会でしかアドボカシーに取り組まない。
第2に、マネジャーはしばしばアドボカシーと全体的な公平性とのバランスを取るのに苦労する。特にチームメンバー全員が同じレベルでキャリアの次のステップに進める状態ではない場合、えこひいきと見なされるリスクがあるし、メンバーを孤立させるかもしれないという不安もある。さらに、マネジャーが自分のイメージを気にして、公的な場でのアドボカシーをためらうこともある。もし、そのメンバーが期待に背いたらどうなるか。未熟な人を推した責任を問われたり恥をかいたりするのを恐れて、チームメンバーの擁護を思い留まることもある。
第3に、アドボカシーは当人にしかメリットがないと誤解しているマネジャーが少なくない。チームやマネジャー自身にとってのメリットはもちろん、二次的、三次的な効果が見えていないのである。
アイコの例からわかるように、チームメンバーのためのアドボカシーとは戦略的なマネジメント行動である。マネジャーが一貫性のあるアドボカシーを行うと、そのメリットは個人を超えて広がる。アドボカシーはチームのパフォーマンスを促進し、忠誠心を醸成し、組織文化を強化する。力づけられた従業員がますます仕事に身を入れ、よりイノベーティブになり、企業の成功に貢献する意欲が高まるという波及効果を生み出す。何より、人材を育てるリーダーとしてマネジャーの評判が高まり、自身のキャリアの前進につながる道が開けるのである。