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長期的な繁栄のために、パニックと消極性の両方に対処せよ
何十年も繁栄を続ける企業がある一方で、最初に成功が続いた後は衰退していく企業もある。それはなぜだろうか。
さまざまな種類の事故と同じように、企業の失敗は総じて、連鎖的な影響が結びついて、それまで有効だった戦略では対処しきれなくなった結果である。ただし、企業の衰退の悪循環につながる失敗の多くは、あまり注目されていない共通の要因に遡ることができる。すなわち、企業の所有形態(オーナーシップ)だ。
上場企業か非上場企業か、あるいは家族、従業員、慈善団体などに所有されているなど、企業はその所有形態によって行動が大きく異なる。また、長期的な存続を目指すうえでも、所有形態によって異なる課題に直面する。
上場企業は収益性を回復するように株式市場からプレッシャーを受けて、業界の動向に過剰に反応し、パニックに陥る傾向が強い。それに対し、非上場企業は変化への反応が鈍かったり、手遅れになるまで何もしなかったりと、消極的に偏るおそれがある。市場による規律が働かない場合、企業は現状維持に過度に縛られやすい。
さまざまな所有形態のメリットとデメリットを理解することは、経営陣にとって、長期的な存続を目指すためにすべての企業が乗り越えなければならない重要な緊張を特定するのに役立つ。数十年にわたり繁栄している企業は、パニックと消極性という両方の危険に同時に対処することが最善のアプローチであると学んでいる。
企業規模、ビジネスモデル、リーダーシップの継承、投資の時間軸、資本構成という5つの主要な観点から考えると、長期的な存続を目指すには、二者択一ではなくそれぞれを両立させるアプローチが必要である。その過程において、企業の所有形態に特有な脆弱性を回避しながら、極端に傾きすぎないようにするのだ。具体的に見ていこう。
企業規模:多角化と集中
株式公開で得た潤沢な資金があり、積極的な成長を求められる上場企業は、他の部門や地域に事業を拡大しようとしがちだが、そうした取り組みはリソースを浪費して中核のミッションから逸れる可能性がある。
対照的に、外部資本へのアクセスが限られ、あるいは特定の目標を達成する必要性が低い非上場企業は、関連のない分野で成長するための手段や動機に限界がある。資本は自社のものであるため、多角化に伴うリスクを取ることに慎重になるかもしれない。結果として、特定の業界に過度に依存しやすく、保有資産も密接に関連したものや垂直統合された資産に偏りがちになる。
長く存続する企業は、中核事業に鋭い集中を持続しつつ、それを中心に多様化の層を築いていく。このアプローチは、市場の急激な変化を吸収し、ビジネスサイクルを通じて価値を最大化することができ、業績の「低めの高値」と「高めの底値」を形成する。このように振れ幅を抑制することは、短期的な価値を減少させるかもしれないが、長期的な存続の可能性を高める。