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キャリアに関する悩みに特効薬はない
あなたは転職、あるいはキャリアチェンジを考えているだろうか。
そうだとしたら、それはあなただけではない。推計によれば、働く人の40%以上が転職の可能性について考え、20%が最近仕事を辞めている。この数字は、知識労働者ではさらに高く、リンクトインによれば、ユーザーの70%が積極的に職探しはしていないが、よい話があれば検討するという消極的な求職者であると推定されている。これが人間関係ではどうかというと、「もっとよい人がいれば前向きに考える」という既婚者は70%に上る(当然、似たような割合の夫婦関係満足度の危機についても語ることになるだろう)。
転職やキャリア「ピボット」(方向転換)に対する関心が高まっている理由はわかっている。第1に、ほとんどの人は、自分の仕事が好きではない。ギャラップのデータによれば、仕事にやりがいを感じている人は10人のうち3人だけである。言っておくが、この数字は、世界で最も成功している企業(つまり職場体験に関する従業員調査を実施するほど、従業員の士気やエンゲージメントを気にかけている企業)で働く人々の推定値である。他の労働者では、さらに厳しい状況が予想される。第2に、マネジャーとリーダーは、従業員のやる気や業績を左右する主要な要因であるが、ほとんどの人は、上司に幻滅しており、トラウマを持っている人もいる。調査によれば、従業員は自分の上司より、見ず知らずの他人を信用し、役員の中で自社のリーダーやマネジャーの質に自信を持っているのはわずか20%であり、リーダーの30~60%が破壊的行動を取り、人は「会社には入るが、上司は見限る」傾向にあり、多くのマネジャーが単純に能力不相応であった。第3に、キャリアチェンジは、一筋縄ではいかない複雑な試みである。興味と能力と選択肢が一致するかどうかには、さまざまな要素が絡むためだ。それに加えて、最近ではAIによって職やスキルが混乱しており、「混乱しないのは、注意を払っていない証拠」というトム・ピーターズの法則を否めない状況である。
仕事の状況を改善したり、キャリアに関する悩みを一挙に解決したりする特効薬があるかのようなフリをするのは馬鹿げている(物事はまさしく複雑だからだ)が、その仕事やキャリアに興味を持った動機や、モチベーションと目の前のキャリア選択との適合性について、じっくりと自己診断をしてみるという手はある。
自己診断:仕事で最も重視することは何か
キャリアにおいて本当は何がモチベーションになっているかを振り返り、判断するために、科学に基づく以下の質問について考えてみよう。新しい仕事やキャリアパスが自分に適しているかどうかを判断する材料になる。
1. けっして譲れないこと、大切にしている価値観や最優先事項は何か
仕事上の安定性、柔軟性、ワークライフバランスといった側面は自分にとってどの程度重要か。リモートワークや在宅勤務にこだわるか。ほぼ毎日オフィス出勤を求められる仕事でも満足できるか。特定のライフスタイルを実現するために、ストレスの少ない職場環境や、休暇を推奨するウェルネス重視の文化を望むか。自分個人の価値観と会社の使命、方針、価値観が一致することはどの程度重要か。これから家庭を築くために、社会保険や育児休暇などの休暇制度が充実している必要があるか。早期退職をするために、一定の給料や補償が必要か(金銭面で考慮すべきことについては後述する)。
これらの質問から、経済的安定や、キャリアと並行して私生活を自己管理できるといった、あなたの基本的なニーズがわかるはずだ。自分の優先事項、特に譲れない一つか二つのことが明確になると、転職活動のよいスタート地点になる。
譲れない条件は、一つか二つに絞るのが理想だ。それが何かを知るには、逆の場合を考えるとわかりやすい。たとえば、次のような仕事をしたいかどうか自問してみるとよい。極度にストレスやプレッシャーの多い仕事、社会への道徳的・倫理的な影響が疑わしい仕事、人(大切な人を含む)から否定的に見られる仕事、極端に退屈な仕事、自分の信念や価値観と相容れない仕事、極端に不安定で先が見えない仕事、社会性や人との交流がない仕事、給料が見合わない仕事。