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付加価値を生み出す人材が持つ4つの思考スキル
「付加価値を高める」ためには、どうすべきか。個人やチーム、企業が付加価値を高めたという時、それは通常、依頼された内容や期待される水準を上回る成果を上げたことを意味する。
たとえば、必要なサービスを提供できる業者を3社探すよう、マネジャーから指示されたとしよう。あなたは3社のリストを作成し、それぞれの長所と短所をまとめたうえで、さらに、そのサービスを外注することなく社内で提供するための解決策まで提案した、というような場面だ。
あるいは、すぐに導入できるフィードバック研修を求めて、あなたの会社を訪れた見込み顧客がいたとしよう。先方のリーダーに何回か話を聞いたあなたは、問題の本質を見抜いた。根本的な問題は部下のフィードバックがうまくないことではなく、彼らがそもそもフィードバックをしたくないと思っていることにあった。そこで、あなたは研修の代わりに、フィードバックを奨励し、その習慣を定着させる介入策の設計を提案した。
こうした事例が示すように、付加価値とは、単に問題を解決することではなく、本質的な課題を見極め、誰も想定していなかった手法で、よりよい結果を導き出すことによって生じるのである。
しかも、そうした解決策は日常的な思考からは生まれない。必要なのは「専門的思考」「批判的思考」「戦略的思考」「システム思考」の4つのスキルだ。これらは、将来の課題を解決するために、あらゆるレベルのリーダーに不可欠なスキルとして、どのようなリストにも必ず含まれるものだ。
あなたがリーダーとして、自社が顧客に付加価値を提供する方法を探しているのなら、あるいはマネジャーとして、チームが付加価値を生み出す方法を模索しているのなら、部下にこれらのスキルを身につけさせる必要がある。ただし、多くのリーダーやマネジャーの側にも課題がある。それは、「専門的思考」「批判的思考」「戦略的思考」「システム思考」といった表現を使っていても、往々にして、それを活用すべきタイミングや、用語の定義すら十分に理解していないことだ。
「あの人は何も考えていなさそうだ」という意味で、「あの人には批判的思考力が足りない」と批判する──そのような場面に出くわすたびに1セントずつもらえるとしたら、私たちの手元にはいま頃、大量の硬貨が貯まっていることだろう。専門的思考、批判的思考、戦略的思考、システム思考は、「優れた思考」の同義語ではない。それぞれに特徴があり、特定のタイプの課題に対処するための思考法である。また、一定の条件を満たした場面でのみ役に立ち、目指すべき最終的なゴールもそれぞれに異なる。これらのスキルを部下に効果的に身につけさせるためには、まずそれぞれの違いをしっかりと理解させることから始めるべきだ。
また、こうした思考スキルは自然に磨かれるものではないという点を認識しておくことも重要になる。これらの思考法の多くは人間に本来備わっている能力ではなく、意識的に身につける必要があるためだ。言い換えれば、脳が自動操縦モードの時には、これらの思考は行われていない(正直なところ、人間の脳はほとんどの時間、自動操縦モードにある。必要に迫られてそうなっており、それ自体は悪いことではない)。
本稿では、4種類の思考スキルについて、その意味と、活用すべき場面を深く掘り下げるとともに、思考のパートナーとしてAIツールを活用する際のヒントも紹介していく。