AI導入に必要な攻めと守りのバランスを取る、2つのフレームワーク
HBR Staff
サマリー:ある調査によると、AIを実用化できた企業は26%、投資から価値を創出できた企業はわずか4%に留まるという。こうした現状を踏まえ、筆者らはAI導入における抵抗や衝動的な実行を回避し、「OPEN」と「CARE」という2つのフレームワークを併用する体系的アプローチを取る重要性を説く。本稿では、AI時代での成功をつかむために、この2つのフレームワークを組織に取り入れる方法について解説する。

AIに対して「楽観」と「警戒」の姿勢を維持するフレームワーク

 2024年のある調査によれば、AI製品の概念実証から実用化へとこぎつけた企業は26%に留まり、AIへの投資から大きな価値を生み出した企業はわずか4%にすぎない。野心と現実の間にある溝を埋めるには、AIトランスフォーメーションへの体系的な取り組みが必要とされる。すなわち、AIによる日々の影響を見失うことなく、AIが提起する最も重要な問いを熟考するよう組織を促すようなアプローチである。

 リスクはこの上なく大きい。適応できない組織は、AI時代のポラロイドやブロックバスターになるだろう。とはいえ、軽率な実行にも危険が伴う。不動産データベースを運営するジロー(Zillow)が2021年2月、機械学習アルゴリズムで査定された物件の買い取りを始めると発表した時、AIの素晴らしき新世界に踏み込む動きとして広く歓迎された。8カ月後、この新規事業部は約3億ドルの損失を計上し、撤退を余儀なくされた。

 AIがもたらすチャンスとリスクには、慎重な考慮と周到な戦略的対応が必要となる。断片的な方策では不十分だ。AI開発のスピードに加え、人間関係や組織文化を変容させるAI特有の能力を踏まえれば、「前例のない不確実性」と「早急な行動の必要性」にバランスよく対応できるフレームワークが求められる。自社の中核的パーパスと人間のステークホルダーを見失わずに継続的な変革を導くことができる、包括的な思考システムが組織には必要だ。

 筆者は30年にわたり、フォーチュン2000に属する企業から大規模な政府機関まで、さまざまな組織を対象にデジタル・トランスフォーメーション(DX)を支援してきた。これらの経験を通して、新技術実装の成功を阻む2つのありがちだが対照的な姿勢に何度も遭遇した。変化に対する組織的な抵抗と、戦略的パーパスを欠いた衝動的な技術導入である。現在、AIへのアプローチでも同じ過ちを繰り返している組織が多く見られる。

 どちらにしても厄介なこれらの問題を解決する方法は、2つの相互補完的なフレームワークを取り入れて組み合わせ、バランスの取れたAI導入のアプローチを構築することである。

 OPENフレームワーク(Outline:アウトライン、Partner:パートナー、Experiment:実験、Navigate:ナビゲート)は、AIの潜在能力を引き出すための4段階から成る体系的プロセスを示し、組織を初期の検証から継続的実行に導く。

 CAREフレームワーク(Catastrophize:最悪の事態を想定、Assess:検証、Regulate:統制、Exit:撤退)は上記と並行する形で、イノベーションのプロジェクトとより広範な企業環境の両方において、AI関連のリスクを特定し管理するための構造を示す。それぞれの目的は異なるが、どちらもAIとともに発展させることができるよう柔軟に設計されている。

 これらのフレームワークは、AIの潜在能力に対する根本的な楽観と、AIのリスクに対する強い警戒という2つの相互補完的なマインドセットを内包し後押しする。イノベーション管理のプロセスと、ポートフォリオおよび財務管理(PFM)の手法を組み合わせることで、組織は強固な予防措置を維持しながら変革を推進できる。

OPENフレームワーク

 OPENフレームワークは、組織のパーパスおよび人間とAIの体験を土台とし、AI導入の成功には技術だけでなく、継続的変革を維持できるリーダーシップと文化も求められることを強調する。プロセスの各フェーズがイノベーション・ポートフォリオの構築に役立ち、アイデア創出から実装、維持管理、そして最終的な撤退に至るまでAIプロジェクトの管理を後押しする。