
-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
成功する中国メーカーの分析から始める
バッテリーや電気自動車(EV)といった戦略的セクターの覇権争いにおいて、寧徳時代新能源科技(CATL)や比亜迪(BYD)といった中国メーカーは、他国のライバルが対抗する余地などまったくないほど大きくリードしている。その主な理由は、コスト面の優位性にある。中国メーカーは国内市場の旺盛な需要に乗じて規模の経済を実現しただけでなく、生産プロセスにおけるコスト削減の手法も確立してきたのである。
この分野で──あるいは大量生産による学習効果が成功のカギとなる他の分野でも──競争しようとする企業にとって、中国メーカーの成功の過程を理解することは単に有益というだけでなく、必要不可欠だ。そうした理解があって初めて、彼らに追いつき、競い合うための戦略を考えるスタート地点に立てる。
トランプ政権が始めようとしている世界的な貿易戦争も、事態をいちだんと複雑にさせる。多くの場合、前に進むためには、プロセスや製品のイノベーションをゲームチェンジャーにして、ゲームのルールを変えるしかなさそうだ。
学習曲線
航空技術者のセオドア P. ライトが、現在「学習曲線」として知られている現象を初めて記録したのは1936年のことだ。彼は、累積生産量が倍増するたびに、コストが予測可能な割合で低下していくことを発見した。作業を継続するうちに労働者の作業スピードが速くなり、新たなツールや手法の導入によってプロセスが効率化され、より安価な原材料や部品を使えるようになり、規模の経済が働き始める。
学習曲線の考え方は、第2次世界大戦中に多大な注目を集めた。米政府と契約した業者が、船舶や航空機の建造にかかるコストを予測する手段として着目したためである。
1960年代には、ボストン コンサルティング グループ(BCG)がこの考え方を支持し、半導体などの技術分野で「フォワード・プライシング」の概念を編み出した。これは、初期段階で製品価格をコスト割れの水準に設定しておく手法のことで、そのおかげでいち早く生産量を増やせれば、学習曲線が急激に進行し、結果的に生産コストを引き下げられる。
この原則は、ソーラーパネルから化学処理に至るまで多くの業界で実践されており、受託製造業者も歴史的にこの戦略に依存してきた。製品の初期製造コストを下回る価格で入札しても、その後の学習曲線と素材の代替によって、最終的には実際の製造コストを入札価格より低く抑えられるのである。
リチウムイオン電池業界からの教訓
リチウムイオン電池業界の現状は示唆に富んでいる。リチウムイオン電池のコストは登場以来、劇的に低下してきた。1990年代初頭には、リチウムイオン電池セルのコストは1キロワット時当たり約7500ドルだったが、2024年には100ドルを下回っている。