見落とせば手遅れになる「隠れたフィードバック」に気づく方法
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サマリー:率直なフィードバックを提供し、「本音でものを言う」ことが奨励されているにもかかわらず、極めて重要なフィードバックは口にされないか、せいぜい間接的に伝えられるに留まってしまいがちだ。原因が何であれ、フィ... もっと見るードバックが隠れたままだと、早期の警告サインが見逃され、貴重な気づきがリーダーに届かなくなる。しかし、誰でも隠れたフィードバックに気づき、本当に重要なことを聞き出すための実践的なステップを踏むことは可能だ。本稿では、リーダーが必要なフィードバックを確実に得るために、筆者が推奨する4つのステップを紹介する。 閉じる

人は重要なフィードバックに意外と気づかない

 マヤ(仮名、以下同)は、消費財企業の最高マーケティング責任者(CMO)に就任すると、すぐさまCEOからキャンペーンのスケジュールに関する細々とした質問を受けるようになり、その頻度の多さは自分の役職としては異例だと感じていた。最初は、CEOのマイクロマネジメントだと軽く考えていたが、実は、そこにはマヤの俊敏さを疑問視する、CEOの口には出さない懸念が隠れていた。マヤは知らなかったが、CEOは、彼女を登用した判断が正しかったのかどうか、疑念を抱き始めていたのだ。

 一方、人事部門のシニアバイスプレジデントであるレオンは、リーダーシップチームの同僚たちが、以前はみずから出席していた幹部人材の人事評価会議に、代理を立て始めたことに気づいた。レオンは彼らの消極的な関与に不満を募らせたが、その行動が彼への「我々の時間を無駄にしている」(ひいては「もしこれがレオンの会議のやり方なら、彼の部門は慢心し、非効率であるに違いない」)という彼らの無言の反応であることに気づいていなかったのだ。

 これらのシナリオは、リーダーがよく経験する問題を表している。つまり、場当たり的に見えるやり取りの裏にある、自分へのフィードバックを見逃してしまうことだ。リーダーがこの「隠れたフィードバック」のサインに気づけないと、ビジネス、人間関係、組織に関する重要な情報を把握し対応する機会を逃す危険がある。フィードバックを見逃すことは、あらゆる方面、つまり下(部下)、上(上層部)、横(同僚)や外部(投資家、取締役会メンバー、顧客、ベンダー、戦略的パートナー)との関係でも起こる可能性がある。そしてどこで起こっても、その影響──意思決定の質の低下、失敗の繰り返し、緊張関係、成長の停滞──は高くつく。

なぜ重要なフィードバックが隠れてしまうのか

 数多くの書籍記事、研修などで、率直なフィードバックを提供し、「本音でものを言う」ことが奨励されているにもかかわらず、極めて重要なフィードバックが口にされないか、せいぜい間接的に伝えられる程度で、日常的なやり取りや質問、または軽い提案に紛れてしまうのは、なぜなのだろうか。

 第1に、フィードバックを提供する側は、反応を恐れたり、所属する組織の文化が率直さを避ける傾向があったりする場合は特に、はっきりと口にすることに躊躇する。第2に、自分は明確なフィードバックをしたと思い込んでいる場合がある(「同じ訂正を3回もした。不満に思っているのは言わずもがなではないか」)。最後に、批判やアドバイスを提供する側は、自分が重要なフィードバックを行うべきだと認識していない場合がある。仕事を次々とこなしている最中か、実際の懸念に気づいていないか、感じたことを表現する言葉が見つからないなど、伝えるべき重要なメッセージをぼんやりとしか認識していない可能性がある。

 原因が何であれ、フィードバックが隠れたままになると、リーダーだけが蚊帳の外ということになる。重要な懸念が口にされず、早期の警告サインが見逃され、貴重な気づきがリーダーに届かないのだ。問題が無視できないほど大きくなった頃には、リーダーは「なぜもっと早く教えてくれなかったのだろう」と思いあぐねることになる。

隠れたフィードバックに気づき、そこから学ぶ方法

 リーダーは、隠れたフィードバックに気づき、本当に重要なことを聞くために実践的なステップを踏むことができる。必要なフィードバックを確実に得るためには、次の4つの方法を試そう。