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曖昧なフィードバックがもたらす大きな弊害
あなたは、曖昧なフィードバックを受けたことがないだろうか。たとえば、マネジャーから「もっと戦略的に考えるべきだ」と言われたり、「我が社のビジネスに関する知識をもっと深めてほしい」とか、「部下にもっとチームプレーヤーとして行動するように指導してほしい」と言われたりしているかもしれない。
こうしたコメントをありがたく感じる面もあるかもしれないが、その半面、この類いのフィードバックを受け取ったところで、実際にどのように行動すればよいのかがわからないとか、コメントの趣旨が明確でないという不満を感じる場合もあるだろう。詳細な指摘や具体的な実例が示されない状況では、どのような結果が望ましいとされているのかを推測するしかなく、自分のどの点をどのように変えればよいのかと途方に暮れることになりかねない。
あるメディア企業で編集局長の職を務めているマヤは、まさにこうしたことを経験した。マヤは、最新の成績評価の内容を理解することに苦労していた。面談の席で、上司からこう言われたという。「万事順調に見えるが、イノベーションを推進し続けてほしい」
一見すると、好ましい評価を得たようにも思える。しかし、コンテンツのラインアップづくりと人材育成に責任を持つ立場であるマヤは、もっと具体的なことを教えてほしいと感じた。いま自分は、物事の長期的な優先順位を正しく判断して、優先順位の高い課題を追求できているのか。上司があえて言葉にしていない問題がありはしないか。そうしたことを知りたかったのだ。
私たちは、昇進すればするほど、このような曖昧なフィードバックを受けることが多くなる。企業幹部や取締役、顧客といった人たちは、往々にして忙しい。そうした人たちが行うフィードバックでは、定性的・主観的なコメントが多くなりがちだ。「思考のパートナーになる」「ビジョンを掲げて部下のモチベーションを高める」「人々の足並みを揃えさせる」といったことは、明確に定義することがしばしば難しく、数値計測することはそれに輪をかけて難しい。
理想としては、このような事柄に関するフィードバックも緻密な表現で行われて、すぐに実際の行動の参考にできることが望ましい。しかし、あなたが接しているリーダーたちも、私たち誰もがそうであるように、不完全な人間だ。そうした不完全な人間が不完全な環境で行動している。あなたの上司は、手に負えないくらい大量の業務に忙殺されていたり、抽象的な思考が得意なタイプである一方、具体的な細部を論じることが苦手だったり、フィードバックを行う訓練を受けたことがなかったりするかもしれない。
とはいえ、曖昧なフィードバックをそのままでよしとするわけにはいかない。悪影響が及ぶのは、あなただけではないからだ。曖昧さがもたらす弊害は、組織階層の上から下へと波及していき、あなたのチームがどのような課題に優先的に取り組むかにも影響を及ぼす。その結果、意思決定のスピードが遅くなり、組織全体に混乱が生まれる。
曖昧なインプットを行動につながるインサイトに転換することは、一つのスキルだ。本稿では、自分の必要としている指示を上司から引き出す方法を紹介しよう。