活力を取り戻せる「積極的な休暇」の過ごし方
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サマリー:休みの日、どのように過ごしているだろうか。だらだらとテレビを見たり、スマートフォンをひたすらスクロールしたりして、終わってしまってはいないだろうか。筆者らの研究によれば、休みの時間に何かをするだけでな... もっと見るく、「成長の機会」を意識的に設定することで、心身の回復効果が高まり、仕事への満足度やパフォーマンスも向上することがわかっている。本稿では、ウェルビーイングと仕事の質を高めたい人におすすめの「レジャークラフティング」の実践方法を紹介する。 閉じる

意味のある休息とは何か

 また月曜の朝が来た。だるい、やる気が出ない、いまから週末が待ち遠しい。働く人々の大多数がそうであるように、あなたは自由時間を休息に充てている。お気に入りの番組をいっき見するスマホの画面をひたすらスクロールする、あるいは睡眠不足の解消のために寝だめをするのかもしれない。ところが週が明けた時、期待通りにリフレッシュされていたためしがない。もっと効果的に活力を取り戻す方法はないものかと、あなたは首を傾げる。

 筆者らの研究によれば、そうした方法が「ある」と断言できる。これまで数年間、筆者らは「レジャークラフティング」を研究してきた。レジャークラフティングとは、目標設定や人とのつながり、学習、個人的な能力開発に力点を置いて、自由時間を計画的に有効活用する積極的なアプローチだ。研究では、この方法は受動的な活動に比べ、ウェルビーイングやメンタルヘルス、生活全般における満足度、そして仕事のパフォーマンスの面で好影響が大きいこと、さらにはバーンアウトを防止することが明らかになった。しかも、休息の他にさらに時間を要するわけではない。アプローチを少し変えるだけでよいのだ。

レジャークラフティングとは何か

 レジャークラフティングは、自由時間に「何を」するかではなく、「どのように」それをするかを重視する。レジャークラフティングでは、すでに楽しんでやっていることを、意図と成長志向のマインドセットを持って計画的に取り組む。「レジャー(余暇)をクラフティングする」とは、(1)個人的な目標を設定し、(2)社会的つながりを促進し、(3)スキルを形成したり何かを学んだりできるように活動を計画的に進めることだ。これはおおまかなガイドラインで、実践はさまざまな形を取りうる。

 たとえば、運動や戸外に出ることが好きな人なら、ハーフマラソンを走るという目標を設定してもよい。週に数回、朝、出勤前に走るのに加えて、毎週、地域の公園で30分間ランニングをするグループに入るという手もある。そうすれば、ランニングのスキルが向上するだけではなく、戸外の空気を満喫しながら近隣のランナーとの社会的つながりを深めることもできる。

 同じように、映画好きの人ならストリーミングサービスでたまたま見かけたものを漫然と見るのではなく、英国映画協会の「史上最高の映画ベスト100」の作品を毎週1本視聴し、映画批評サイトのレターボックスに短いレビューを投稿する。そうすれば、批判的思考を働かせ、映画好きのコミュニティの中で文章によるコミュニケーションスキルを鍛えることができる。

 ファンタジーフットボール(実在するサッカー選手でバーチャルチームをつくるオンラインゲーム)の熱烈な愛好家ならどうだろうか。参加を続けるのに必要最低限のことだけをするのではなく、トレード戦略を磨くために交渉のワークショップに登録してみる。それと同時に、予測モデリングのテクニックも身につけることで、ラインアップの意思決定を最適化できるようになるだろう。

 しかし、実際、こうした過ごし方はただだらだらと過ごすよりもよい結果をもたらすのだろうか。以下は、筆者らの研究結果である。

レジャークラフティングとウェルビーイングに関する科学的背景

 筆者らは、レジャークラフティングを実践した場合と、受動的な活動やレジャークラフティングのマインドセットなしに余暇を過ごす場合との違いを理解するために、2400人以上の現役のプロフェッショナルを対象にして11件のフィールド調査を実施した。参加者はどのように余暇を過ごしたかと余暇に対するマインドセットについて報告した。また自身のエネルギーのレベル、気分、全般的なウェルビーイングを測定する一連のアセスメントにも回答した。すると、顕著な結果が出た。レジャークラフティングを実践する人は、主に受動的な姿勢で余暇を過ごす人に比べて、エネルギーのレベルが高く、気分が前向きで、全般的なウェルビーイングが良好だった。さらに、レジャークラフティングは個人の自律性、コンピタンス、社会的なつながりの感覚の強さと関連していた。これらはすべてウェルビーイングに貢献する要素である。また、そのような積極的な姿勢で余暇を過ごす人は、自分は有意義で、魅力的で、充実した生活を送っていると感じると報告する傾向があった。