不確実な状況で意思決定に迷った時、立ち返るべき4つの問い
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サマリー:現代のリーダーは、地政学的リスクや気候変動、AIの進展など、予測困難な環境下で継続的な意思決定を迫られている。こうした不確実性の中では、過去の成功体験に頼るのではなく、状況を見直し、創造的な思考を促す「... もっと見る正しい問い」が重要となる。問いの質が、視野の広さや行動の柔軟性を左右するからだ。本稿では、意思決定における4つの問いの活用方法を具体的な企業事例とともに紹介し、不透明な時代を乗り切るための実践的な手法を探る。 閉じる

不確実な状況を乗り切るには「正しい問い」が重要

 地政学的な不安定さ、気候変動による衝撃、AIによる破壊的変化など、現代のリーダーたちは時折起こる危機に対処しているのではなく、永続的な危機の中に身を置いている。

 状況が常に変化し続ける中、古い前提に頼った意思決定はすぐに時代遅れになる。前回はうまくいった方法が、もはや通用しないかもしれない。

 こうした状況において、正しい問いを立てることが、リーダーにとって最も強力な行動の一つとなる。なぜなら、よい問いは答えを見つけるだけでなく、思考を広げ、新たな視点から選択肢を見つめ直すきっかけとなるからだ。

 従来の問いは、曖昧さを減らすことを目的としている。たとえば、「投資収益率はいくらか」「タイムラインはどうなっているか」「主要なマイルストーンはどう決定するのか」といった問いである。しかし、不安定さが常態化している時は、こうした問いは意図せず視野を狭め、チームは性急な結論を出したり、システム全体の変化を見落としたり、重要な行動を先延ばしにしたりするようになる。プレッシャーのかかる状況では、慣れ親しんだことに意識を向けがちだが、その本能は、コントロールできているという錯覚を生み出し、新たなリスクや貴重な機会を見逃したり、世界が動いているにもかかわらず過去の論理にとらわれたままになったりする。

 不確実な状況下では、リーダーには視野を広げ、新たな洞察を生み、創造性を刺激する問いが必要だ。適切な問いは、誤りを避けるだけでなく、新たな道を開く。

 以下は、筆者が、クライアントが曖昧さと向き合い、乗り越えるのを支援する際に用いている問いである。それらの答えは、未来を予測するものではない。ノイズを遮断し、盲点を浮き彫りにし、行き詰まりを突破し、「いま、この瞬間」の思考をより明確にすることができる。

1. 今日の決定は1年後も理にかなっているか

 目先の問題を解決するための意思決定は簡単にできるが、それが将来的に新たな問題を引き起こすこともある。この問いを立てることで、リーダーは立ち止まって自身の選択の持続可能性を考えるようになり、短期的な混乱の中に長期的な視点を注入できる。

 この問いに答えるのに完璧な先見性は必要ないが、明確さが欠かせない。「私たちは本当はどの方向を目指しているのか」「この決定を通してどのような価値観を反映させたいのか」「どのような種類のリスクを将来も背負っていく覚悟があるのか」といったことだ。この問いは一種のフィルターとして機能し、チームがパニックやプレッシャーに流されず、現状を維持するだけでなく目指す方向と一致する意思決定をするのに役立つ。短期的な成功よりもレジリエンスを、ノイズよりも戦略を優先するものだ。

 世界的な消費財ブランドのシニアリーダーであるアラナは、四半期決算が振るわず、コスト削減のプレッシャーにさらされていた。財務チームは、単純な解決策を提示した。サステナビリティに関する取り組みをすべて廃止するというものだ。それは業務上の混乱を最小限に抑えつつ、迅速なコスト削減につながり、まさに四半期報告書が求めていることだった。しかし、その提案に彼女は何か引っかかるものを感じた。