人事部が面接候補者を選ぶことの意外なメリット
Jorg Greuel/Getty Images
サマリー:マネジャーに代わって人事部が1次面接候補者を選ぶと、選考における無意識の偏見が軽減され、女性の採用比率が上昇することが研究で明らかになった。候補者の絞り込み手法の違いが、採用結果に大きな影響を及ぼして... もっと見るいるのだ。本稿では、選考プロセスを変更したことで組織内に生じた具体的な変化を紹介し、企業がより公平で多様性のある採用を実現するために活用すべき知見を解説する。 閉じる

書類選考を現場のマネジャーから人事部門に移したことによる影響

 多くの組織では、マネジャーがまず面接対象となる候補者を選び、その後、誰を採用するかを決める。彼らの専門知識は適任者の選考において極めて重要だが、応募書類の審査や候補者の絞り込みに集中するために本来の業務から一歩離れなければならず、そのプロセスには手間と時間がかかる。しかし、1次面接を受ける候補者を選ぶ責任を人事部に移したらどうだろう。採用者の選定に影響はあるのだろうか。学術誌「アドミニストレイティブ・サイエンス・クォータリー」に掲載された筆者らの研究では、このシナリオを検証している。

 ある大手多国籍テクノロジー企業(機密保持のためアルファ社と呼ぶ)が、候補者の絞り込みをラインマネジャーから人事部門に移したところ、女性の採用者が増えた。男性優位の職場でジェンダーダイバーシティを向上させるという特別な目標を掲げていなかったにもかかわらずだ。

 なぜか。人事担当者とマネジャーでは、候補者の絞り込みの方法が大きく異なったからだ。その差が、最終的な採用者にまで波及効果をもたらした。筆者らの研究結果は、選考プロセスに忍び込む無意識の偏見を減らすシンプルな方法を探している企業にとって、大きな意味を持つ。

研究

 2018年、アルファ社は採用プロセスを一部変更した。旧システムでは、人事がすべての応募書類をラインマネジャーに転送し、マネジャーが応募者を絞り込んで面接を行っていた。新しいプロセスでは、マネジャーが職務要件を人事に伝え、人事により、マネジャーが面接をする最初の7人の応募者を選ぶ(最終的な採用決定はマネジャーが行う)。同社がこのプロセスに切り替えた理由は一つ、優秀な候補者を逃しかねない採用プロセスの不必要な遅れを減らすためだった。

 アルファ社は採用プロセスを一度に変更したわけではなく、世界各地の子会社に対し7段階に分けて導入した。それにより筆者らは、採用プロセスの変更前と変更後の結果を比較するまたとない機会を得た。

 60カ国以上の拠点で2年間に外部採用された8750人のデータを分析したところ、人事担当者が候補者の絞り込みを行った場合、より多くの女性(9.2%増)が採用されていたことがわかった。

 さらに、国連のジェンダー社会規範指数に照らすと、この効果は、女性の職業選択に対する見方がより厳格な国々において最も顕著であることも判明した。