サービス業に押し寄せる「工業化」の波

 近頃、アメリカの主要新聞各紙の一面に「オフショアリング」(海外へのアウトソーシング)という言葉が毎日のように登場する。これらの記事は一様に、労働力の海外移転を嘆き、アウトソーシングによって中流階級の仕事が海外アウトソーサーに奪われていると非難している。

 このオフショアリングは最近、「アメリカの輸出」を秘密裏に企てている企業幹部が、国内における高給のホワイトカラーの仕事をより賃金の低い、たとえばインドなど諸外国の熟練労働者に回すことを意味している。

 サービス業は現在、アメリカ産業界における雇用の80%以上を占めているが、これが奪われてしまうと大きく騒がれているのは、何もアメリカだけではない。サービス業はあらゆる先進国で危機にさらされているのだ。

 2003年には5万件もの職が海外に移転したといわれるイギリスでも、オフショアリングは国民の関心と議論の的になっている。ドイツやスウェーデンでは政治に働きかける行動へと発展している。

 しかしながら、このような議論はいまに始まったものではない。経済が大きな変化を遂げるたびに保護主義が叫ばれ、これが不評な場合には見苦しい声が上がるのは毎度のことである。

 実際、政治がこのような問題を解決してくれる場合もある。たとえばアメリカは、1980年代、企業間競争を促進することで景気をみごとに回復させた。

 半面、逆効果を招く場合もある。30年にスムート・ホーリー関税が導入され、輸入品に関税が課されると、大恐慌が生じた。現在と同じく当時も、社会そして企業は、目の前の経済の現実に対峙するしか方法がなかったのである。