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AIエージェントはもはや新しい「人材」である
AIが成熟するに従い、いわゆる「デジタル労働者」の供給が爆発的に増して、質の高いワークフォースの定義を変えている。これまでは人間の独壇場と考えられていた領域に、AIエージェントが加わり、かつては自動化できないと考えられていた多くのタスクを処理している。その結果、セールスフォースCEOのマーク・ベニオフによれば、デジタル労働者の対処可能な市場は近く数兆ドルに達する可能性があるという。
こうなると、将来の展望を大きく修正する必要が出てくる。ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)とデジタルデータデザイン研究所の新たな研究によると、AIエージェントは単なるアシスタント以上の存在に急速になりつつある。むしろデジタルチームメートという、新しい「人材」のカテゴリーを生み出しつつある。この新しいチームメートを最大限に活用するために、人事部や調達部門のリーダーは、デジタル労働者を統合したハイブリッドチームを構築するワークフォース戦略と、人材戦略を練り始める必要がある。そのために時間をかける組織は、効率だけでなく、よりスケーラブルでレジリエントな(再起力のある)コラボレーションを実現できるだろう。
それはすでに現実になりつつある。たとえば、大手コンサルティング会社デロイトは、AIエージェントを「すべての」法人向けサービスに活用する過程にあると報告している。これには、顧客の業務を最適化するための多くのタスクをまとめ上げるマーケティングエージェントの役割が含まれるという。人材サービス世界大手アデコから独立したアールポテンシャル(r.Potential)などの一部人材紹介会社は、人間を紹介するだけでなく、人間とAIの両方が含まれる労働力を構築する企業として、ビジネスモデルを見直している。
このような新しい環境で企業が成功するためには、AIをワークフォース戦略に統合することを積極的に考える必要がある。いますぐに行動する人事部門および調達部門のリーダーは、AIをどのように調達し、社内に組み込み、規制するかを制御できるが、行動を躊躇するリーダーは、新たな成長機会を逃すおそれがある。さらにひどければ、コンプライアンス、倫理、業績の面で予期せぬ問題に直面する可能性もある。これは破壊的なものに直面した時の、企業戦略全般における懸念事項だ。もはや、新しいテクノロジー(とりわけAI)がいつのまにか消え去ることを願って、無視しているわけにはいかない。世界が変わっていく中で、変化に適応する方法を深く理解できるように、リーダーが自社システムの構築に深く関与する必要がある。
対応が遅い企業は、トップクラスの人材を確保するのにも苦労するだろう。なぜなら求職者の側でも、AIがサポートするスマートなワークフローによって、みずからの生産性と創造性を高めたいという期待が広がっているからだ。スピーディに動く競合他社は、AIを事業モデルに直接組み込み、人員を増やさなくともアウトプットを増やすことによって、スケール化を実現し、学習効果も高める。さらに、顧客としての大企業や政府が、強力かつきちんと監査可能なAIポリシーとガバナンスを要求するようになると、この領域で未熟な組織は不利になり、重要な入札案件や協力契約から外されるおそれがある。このように、無策はチャンスを逃すだけでなく、現実的なビジネスリスクをもたらすのだ。
7つの重要アクション
筆者らは、データサイエンスとAI、そしてオープンタレントと人材紹介のエコシステムにおける経験に基づき、すぐに着手できる枠組みを構築した。それは、人間とAIエージェントから成るチームの概念に基づき、新しいタイプのワークフォース戦略を設計し、試し、スケールするための手引きとなるだろう。
タスクと結果をマッピングする
この段階で目指すのは、ポジションやプロジェクトをタスクや結果により分解することだ。人間の候補者のコンピテンシーを定義するのと同じように、AIエージェントのほうがうまく、スピーディに、そして費用対効果が高く処理できるタスクを特定する必要がある。まずは、大量のデータ検証や反復的なコールセンター機能が、AIエージェント向けタスクの最有力候補となるだろう。一方、複雑な判断や説得、または深い専門知識を要するタスクは、依然として人間のインサイトか、AIを交えたハイブリッドアプローチで対処するかもしれない。
ポイントは、もはや単に「労働力を買う」ことではなく、人間とAIの組み合わせがもたらす結果を購入することにある。したがって、調達に関するディスカッションは、タスクの細かな分解から始めて、労働力を正しく組み合わせることが重要になる。