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サステナビリティに関するメッセージを打ち出すための3つの戦略
企業の環境イニシアティブや社会イニシアティブが政治的な押し戻しや訴訟リスクに直面する中、サステナビリティ担当リーダーらは、「目立たないよう静かにしている」か「声を上げる」かという、コミュニケーション面で難しい選択を迫られている。「目立たないよう静かにしている」ことを選び、サステナビリティへの取り組みについて語ることを意図的に控えるか、まったく触れないようにする企業が増えている理由は容易に理解できる。企業は、右派か左派かを問わず、あらゆる政治的理念を持つグループから圧力を受けている。保守派は企業のESG(環境、社会、ガバナンス)努力や「ウォーク(社会正義に目覚めた)資本主義」を攻撃し、進歩主義者らは、根拠の乏しい宣伝文句やグリーンウォッシング(見せかけの環境配慮)を厳しく追及してくる。この著しく緊迫した状況で、目立たないよう静かにしているのは、リスクを最小限に抑える最善の方法に見えるかもしれない。だが、それは近視眼的な戦略だ。
ピュー・リサーチセンターの最近の調査によると、米国人の約70%が、大企業は気候変動の影響を抑える努力が足りないと考えている。したがって、この領域で沈黙すれば、消費者の信頼をいっそう失うおそれがある。また、気候変動対策がもたらす企業価値は拡大し続けている。こうした対策には、廃棄物の排出削減による経費節減や、資源の継続利用による原材料コストの削減、エネルギー使用量の削減、エネルギーとサプライチェーンの強化によるリスク低減が含まれる。
こうした価値を強化するために、企業はポジティブだが過度に楽観的にならず、明快だが壊滅的な印象を与えず、熱意を示しながらも不当な反発を招かないような、透明性の高いコミュニケーション戦略を取る必要がある。そのためにはメッセージの内容と表現、そしてフォーマットを、深く戦略的に検討する必要がある。そこでリーダーが取るべき戦略は3つある。
・従業員と顧客の期待を理解し、それに対処する。
・メッセージを裏づけるストーリーや事実を示して、オーディエンスと感情的につながる。
・伝統的なサステナビリティリポートを超えたものを作成する。
筆者らの経験では、この3つの戦略を実践したリーダーは、自社ブランドの差別化に成功してきた。関連データによる裏づけがある、パーソナルで共感的なサステナビリティコミュニケーションを、複数のチャネルで一貫して届ければ、経営陣の断固たる決意を示すことができる。それは投資家の信頼と従業員のエンゲージメント、そして消費者の忠誠心を築くことができる。
1. 従業員と顧客の期待を理解し、それに対処する
研究によると、米国を含む世界の消費者の期待は、必ずしも政治的なレトリックの影響を受けていない。消費者は持続可能な製品をいちだんと求めており、購買行動を通じてそれを示している。すべての社会経済的階層で、持続可能な製品への嗜好が高まっており、その価格は26.6%高いにもかわらず、市場シェアは23.8%に達する。
同じように、勤務先の企業が環境にポジティブなインパクトを与えることを期待する人が増えており、その傾向は求職活動にも表れている。求職者の3分の2が、環境的に持続可能だと思う組織の求人に応募したり、内定を受け入れたりしたいと回答している。