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メタ、アマゾン、マイクロソフトが原子力発電に投資
この1年ほどの間に、大手テクノロジー企業が続々と原子力エネルギーへの大がかりな投資に踏み切った。メタ・プラットフォームズは、電力大手コンステレーション・エナジーのイリノイ州の原子力発電所で生産される電力を20年間にわたり購入する契約を締結した。グーグルは、自社のデータセンターで必要となる電力を確保するために、原子力新興企業カイロス・パワーとの間で、複数の最新鋭の原子炉を建設する支援を行う契約を結んだ。
また、アマゾン・ドットコムは、エナジー・ノースウェストやドミニオン・エナジーと契約を結び、原子力発電所の開発に乗り出している。マイクロソフトも、スリーマイル島原子力発電所の1号機を再稼働させ、20年間にわたり電力供給を受けるための契約を結んだ。
ここにきて原子力発電への関心が高まっている背景には、原子力発電分野の企業と生成AI分野の企業がそれぞれ直面している難しい課題を解決したいという思いがある。
原子力発電分野の企業が直面しているのは、市場で自社への需要が生まれる時期をどう予測すればよいのかという問題だ。原子力発電所を建設する企業はこれまで何十年もの間、長期的に市場環境が良好なタイミングで発電所の稼働を開始させることがなかなかできずにいる。
一方、生成AI分野の企業が直面しているのは、自社のデッドラインを取引先やサプライヤーにどうやって伝えればよいのかという問題である。巨大AI企業は、いまよりさらに多くの電力を切実に必要としている。しかし、旧来のエネルギー産業は、そうした切迫感を共有していない。重要な原材料のサプライヤーとスケジュールに関する認識を共有することは、必要な原材料を必要なタイミングで確保するうえで非常に重要な意味を持つ。
以上の2つの問題が浮き彫りにしているのは、タイミングが何よりも重要だということだ。タイミングのマネジメントは、電力会社とAI企業の双方にとって今後極めて重要な戦略上の課題になるだろう。その課題を達成することにより、両者ともそれぞれの問題を解決できるからだ。
もちろん、テクノロジー戦略においてタイミングが重要なのはいまに始まったことではない。しかし、その重要性はかつてなく高まっている。しっかり予定を立ててデッドラインを守ることは、いまや電力業界とAI業界にとって必須課題と言ってもよい。
AIを取り巻く電力環境の変化
議論の前提として、まず何が問題なのかを確認しておこう。ここで問題なのは、AIは大量の計算処理を必要とし、大量の計算処理を行うには、これまでのウェブベースのテクノロジーとは比較にならないくらい大量の電力が必要とされるということだ。
最近まで、コンピュータの計算処理のための電力需要は、比較的緩やかなペースで、そして予測可能なペースで増加してきた。電力研究所(EPRI)による最近の報告書によると、2000年から2010年にかけて初期のインターネットが拡大する過程で、米国内のデータセンターの電力消費量は年間30テラワット時から70テラワット時に増加した。これは、その10年の間におおよそベラルーシ1カ国分の電力消費量が増えた計算だ。また、EPRI のデータによると、2010年から2017年にかけてデータセンターによる電力消費量はほぼ横這いだった。
しかし、生成AIブームの到来によって状況が一変した。チャットGPTで一つの応答を生成するだけでも、何兆件もの計算処理が必要とされる。その結果、このプロセスでは、グーグル検索を1回行う場合の10倍近い電力が消費される。オープンソースのAI企業ハギングフェイスとカーネギーメロン大学の研究によると、強力なモデルによって1000点の画像を生成すると、ガソリン自動車を4.1マイル走行させるのと同じくらいのCO2が排出されるという。