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公私ともに順風満帆な生活の裏で
一見すると、ショーンは順調だった。キャリアの早い段階で仕事に多大な努力を注ぎ、事務所のパートナーにまで昇進した。現在は組織のトップリーダーの一人として、勤務時間を自分で決める自由があり、その柔軟性を妻と子どもたちのために使っていた。ショーンにとってそれは、朝に子どもたちを保育園に送り、午後4時までに仕事を終えて夕食前に一緒に過ごし、週に一度は仕事を数時間遅らせて子どもたちの水泳教室を見学するということだった。
しかし、家族のために柔軟な働き方を活用しつつ、仕事でも優れた成果を出そうと努力することは、みんなが寝た後に再びPCに向かい、深夜に仕事を終わらせようとすることを意味していた。さらに、子どもたちが起きる前に運動しようと、アラームを午前4時半にセットしていた(しかし、運動がスヌーズボタンに勝つことはほとんどなかった)。
ショーンは、素晴らしい夫であり父親であり、事務所では成功したパートナーでありたいと望んでいた。そして、睡眠不足や運動不足によって健康を損なうことなく、それらすべてを実現したいと考えていた。しかし、たとえ家族と多くの時間を過ごしていても、ショーンは常に仕事が遅れていると感じており、心からその時間に集中することができなかった。
その結果は──燃え尽き症候群(バーンアウト)だった。
あなたも思い当たるところがあるだろうか。柔軟なスケジュールという恵みが、通常の勤務時間内に仕事が終わらない時には、呪いのように感じられることもある。不規則な時間に仕事を詰め込むことになり、心身ともに限界を感じてしまう。しかし、フレックスタイムを使わないことは、機会を逃したように感じられる。特にリーダーは、従業員に提供された制度を活用する姿勢を示すよう求められることが多い。
では、どうすればよいのか。筆者はタイムマネジメントのコーチとして16年以上の経験を通じて、完全に柔軟なスケジュールは、どこにも十分に応えられていないと感じる燃え尽きの原因になりうることを見出してきた。また、自分がその時々で正しいことをしているという確信が持てず、常に気が散ってしまう原因にもなる。さらに、どこかでより多くの時間を費やすべきだと常に感じているため、リラックスすることに罪悪感を覚えてしまう。
しかし、時間をより戦略的に使い、柔軟性を自分の味方にする方法は存在する。仕事と生活のバランスを取り戻し、どちらにも真に集中するためのステップを以下に示す。
「十分」の基準を明確にする
人生のさまざまな領域で、何が「十分」かという明確で現実的な基準がないと、自分は失敗しているのではないかという感覚に陥りやすい。
ショーンは、スケジュールと目標を客観的に評価した結果、家族と過ごす時間における「十分」の捉え方を修正する必要があることに気づいた。それは、午後5時まで働くことと、朝の水泳教室をスキップすることを自分に許し、その日は午前9時30分ではなく7時30分から仕事を始められるようにする、ということだった。出張で家族と離れる時には、柔軟性を活かして金曜日は早めに仕事を終えたいと考えていた。しかしほとんどの日は、日中に仕事の時間を多く確保することが、自分自身にも家族にも最も役立つとショーンは気づいた。
また、通常の勤務時間中に働く時間を増やし、その時間をより戦略的に使う工夫をすることで、午後10時以降は決して必要な場合を除いて仕事をしないと決めた。これにより睡眠をしっかり確保し、早朝に起きて運動できるようになった。
自分の生活において何が「十分」かを定義するには、まず標準的な勤務時間を設定するか、週当たりの労働時間の目標を定めることから始める。次に、自分にとって最も重要なプライベートの時間の使い方を明確にする。たとえば、パートナーとの夕食や子どもの試合、発表会などは優先すべきだが、通常の練習やレッスンは省略してもよいと考えられるかもしれない。
自分が最も価値を提供できる場所を明確にする
ティムはエグゼクティブであり、夫であり、大人数の再婚家庭の父親でもあった。彼はいつも罪悪感を抱えていた──仕事をしている時は家族と過ごしていないことに、家族と過ごしている時は仕事をしていないことに対して。
ショーンと同様に、ティムのスケジュールの各領域で「十分」の基準を定義した。ただし、ティムの場合はさらに一歩進めた。勤務時間をより柔軟性の少ない枠に圧縮するには、自分が最も価値を発揮できる領域を徹底的に明確にする必要があった。シニアリーダーとして、組織のために確実に成果を出すことが求められていたからだ。
働く時間に柔軟性があったとはいえ、勤務時間のほとんどが連続する会議に費やされていた。そのため、自分一人で進める仕事は夜や週末にこなさざるをえなかった。そこで時間を確保するために、会議の見直しを行い、出席している会議のうち、本当に必要なものを精査した。この評価の後、ティムは会議への出席を断ったり、チームメンバーに任せたり、メールで意見を伝えたり、意思決定の部分だけに参加して実行段階が始まると退席したりといった方法で、会議数を減らすようになった。
こうして日中に、たとえば全社的な取り組みのロードマップ作成など、戦略的な業務に集中する時間が生まれた。また、他の経営幹部と打ち合わせをして、その計画についての調整を行う時間も確保できた。ティムのパフォーマンスは向上し、自分の時間を最も有効に使うことで昇進を果たした。何よりも罪悪感から解放され、夜や週末に家族と過ごす時間を確保できるようになった。
シニアリーダーには、こなせる量を超える多くの仕事が常に求められるものである。成功するためには、組織の目標に照らして自分が最も価値を発揮できる領域を明確にし、そこに集中し、それ以外の業務は可能な限り排除することが重要である。
短期的には人を不満にさせてもよい
国際組織のディレクターであるサラは、在宅勤務が可能で、子どもを学校に送ったり、日中に友人や家族と連絡を取ったりできる柔軟性があった。しかし、その柔軟性のせいで、夜遅くに海外の同僚との電話に応じなければならないと感じていた。本当は、子どもたちが寝た後は夫とゆっくり過ごしたかったのに。
サラは、短期的にみんなを満足させようとすることで、自分自身が本当に不満を感じていることに気づいた。
サラもショーンやティムと同様に、勤務時間に関する「十分」を定義し、自分が最も価値を発揮できる領域を明確にした。そして、さらに一歩踏み出し、明確な境界を設ける必要があることに気づいた。つまり、どうしても必要な場合を除いて日中に友人や家族と連絡を取らないこと、そして海外の同僚には、より自分に都合のよい時間に会議を設定してもらうことである。もし都合の悪い時間帯に会議が予定された場合、それが緊急でなければ、1カ月前までに予定を立てるよう依頼するようにした。
サラは、自分の時間をすぐに提供するという形で、すべての人に即時の満足を与えるのをやめた。しかし柔軟性を抑えたことで、対人関係では注意散漫でストレスを抱え、ときに苛立っていた以前とは異なり、落ち着いて、明るく、思考が明確で、親切に接することができるようになった。これは周囲にもよい影響を与え、燃え尽きそうな感覚も大幅に軽減された。
完全にオンになり、完全にオフになる
ヘンリーは400人規模の法律事務所でシニアパートナーとして成功を収め、さらに他の2つの企業でもシニアリーダーを務めていた。家庭では妻と2人の幼い子どもを大切にしていた。一見すると、すべてを手に入れていた。朝は妻と子どもたちとゆっくり過ごし、夜や週末もほとんど家にいた。ただし、その間も常にスマートフォンに目を向けており、万一の事態に備えていた。常に対応できる状態にしていたことが、心から休むことを妨げていた。
ヘンリーは筆者との取り組みを通じて、たとえ在宅勤務中でも、仕事中は完全にその場に集中し、私的なことに関与しないようにしたいと気づいた。その一方で、家族といる時はより家族のことだけを考えていたいとも思っていた。そこで、妻と子どもと過ごす時間には、スマートフォンを消音にしてカゴに入れておくというルールを自分に課した。子どもたちが寝るまでは、いっさいスマートフォンを見ないことにした。
常に連絡が取れる状態から、「オン」と「オフ」を明確に線引きしたことで、ヘンリーは日々の生活の中でより充実感を得られ、リフレッシュできるようになった。さらに彼は、休暇中にいっさい仕事を確認しないことを自分に許した。これは彼にとって何年もなかったことである。
スマートフォンやスマートウォッチに縛られていると感じるなら、自分が明確にオフにできる時間帯のルールを決めよう。たとえば、夕食前にログオフしてから子どもが寝るまでは、仕事から完全に離れる。「メールなし」の週末を設定し、仕事用のメールは確認せず、緊急時の連絡はショートメッセージのみに限定するという方法もある。具体的な時間やルールは人それぞれだが、重要なのは、あなたと周囲の人が「いまこの瞬間にあなたが完全にそこにいる」と確信できる環境をつくることである。
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リーダーであれば、真に緊急の状況においては業務時間外でも対応しなければならない場面があるだろう。一方で、個人的な優先事項のために柔軟に対応したいと考える時もあるはずだ。自分のスケジュールを戦略的かつ能動的に管理することで、優先事項に沿って時間を投資しているという自信が高まり、バーンアウトのリスクも軽減できる。
"Is Your Flexible Schedule Burning You Out?" HBR.org, June 09, 2025.