1979年に始まるチャイナ・インパクト

 中国が大きな脚光を浴びているが、それにはもっともな理由がある。それは、中国が巨大な国であるとか、過去3年間で急速な経済成長を続けた唯一の国であるとかにとどまらない。中国があらゆる多国籍企業の競争力に、きわめて甚大な影響を及ぼす存在であるからなのだ。

 たとえば、中国の製造コストの低さは、とりわけ商品価格にインパクトをもたらすが、どこの国もこの影響を被る。このことは、現地に生産施設を備えているか否か、中国と貿易しているか否かは関係ない。

 中国が成し遂げた発展の裏には、複雑な状況が隠されている。

 驚異的な成長と猛烈な勢いで拡大する国内市場は、たしかに大きなビジネスチャンスを約束している。しかし、この成長ゆえに構造的な弱みが覆い隠されている。

 他国と比較して製造面で優位であるため、諸外国への輸出基地として、中国は何とも魅力的だ。ところが、その基盤を支えるべき経営環境は目まぐるしく変化しており、おのずとリスクも高い。利益の向上を願う企業の多くにとって、これが欲求不満の種になっている。

 1979年、中国が初めて恐る恐る外国からの直接投資に門戸を開放した当時、外国人に許可された地域、業種、そして参入形態には厳格な規制が設けられていた。しかしその後の数十年間、これら規制が緩和されていくに従って、外国企業の運命もだんだんと好転していった。

 とはいえ、中国の重要性が本当の意味で一変したのは、WTO(世界貿易機関)加盟の合意条件を履行し始めた数年前にすぎない。そして、中国は主要国のなかで急速な経済発展を遂げている唯一の国として、いまや注目の的である。

 中国におけるチャンスとリスクのみならず、中国をいかに理解し、いかに自社の競争戦略を適応させるか、その重要性は各段に高まっている。これらの要素はますますダイナミック、かつ複雑化しており、多国籍企業の成功を大きく左右する。

 チャンスとリスクの複雑性を把握できるか否かによって、大きなビジネスチャンスをつかめるか、それとも失望を味わうかを分ける。