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【HBR CASE STUDY】
[コメンテーター]
エリック・ジュジエ(Eric Jugier)ミシュラン・インベストメント 会長
デイビッド・スー(David Xu)マッキンゼー・アンド・カンパニー プリンシパル
ポール W. ビーミッシュ(Paul W. Beamish)ウェスタンオンタリオ大学 リチャード・アイビー経営大学院 アジア地域経営研究所所長
ディーター・ツロウスキー(Dieter Turowski)モルガン・スタンレー・ディーンウィッター M&A部門 マネージング・ディレクター
[ケース・ライター]
キャサリーン・シン(Katherine Xin)チャイナ・ヨーロッパ・インターナショナル・ビジネススクール 教授
ウラジミール・プシク(Vladimir Pusik)IMD 教授
*HBRケース・スタディは、マネジメントにおけるジレンマを提示し、専門家たちによる具体的な解決策を紹介します。ストーリーはフィクションであり、登場する人物や企業の名称は架空のものです。経営者になったつもりで、読み進んでみてください。
オハイオからの命令
オフィスの窓にはベルベットの深紅のカーテンがしつらえられていた。そこから眺める上海は見事と言うしかなかった。西洋建築の堂々たる歴史的建造物の数々、近代的な高層ビル群、そしてかの有名なTVタワー。
しかし、今日のマイク・グレイブスにはそれを楽しむ余裕はなかった。中国のパートナーから届いた新しい企業買収の目論見書──これが4社目となる──のコピーを握り締め、落ち着かない様子で歩き回り、先日の朝の電話での会話を思い出していた。それは、何とも不安をかき立てるものだった。
その日、マイクは合弁企業の設立10周年を祝うパーティで短いスピーチをすることになっていた。何か気の利いたコメントでももらえないかと思い、オハイオ本社の上司、ビル・ウィンドラーに電話した。
しかし、スピーチの内容──ほとんど合弁事業の「世界品質の達成」についてである──をかいつまんで報告し始めると、電話の向こうで上司が不満を募らせていくのを感じた。5分も話しただろうか、ウィンドラーがマイクの話を遮った。「自慢話はそのくらいでよかろう」