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3人の識者に尋ねる、これからのCEOに必要なもの
現代の経営環境は変化が激しく、予測不可能であることは周知の事実だ。CEOはコロナ禍から、しょっちゅう変わる関税政策、そして生成AIの台頭まで、標準的な経営手法では対処できない新しい課題に直面している。
このため、多くの企業でCEOの退任が相次いでいる。米国企業を対象としたある調査によると、2024年に退任を表明したCEOは約2000人と、過去最高を記録した。
その一方で、エグゼクティブ専門のリクルーターの報告によると、退任するCEOの後任に就くことに関心があるか、その準備ができている人が少なくなっているという。このことは多くの疑問を浮かび上がらせる。優れたCEOになるために必要な資質に大きな変化が訪れているのか。新CEOがそのような変化に対処できるようにする措置は十分講じられているのか。未来のリーダーが混沌とした時代に難しい決断を下し、多様性があって、テクノロジー主導で、グローバルな従業員を率いることができるよう準備をさせるには、どうすればよいのか。
こうした問いの答えを探るために、『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)は3人の専門家に話を聞いた。
・ジニー・ロメッティは、IBMの会長、社長、CEOを歴任し、現在は複数の企業の社外取締役を務めるほか、黒人管理職を増やすことを目指すネットワーク「ワンテン」(OneTen)の共同会長を務める。
・ニティン・ノーリアは、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の元学長で、現在もHBS教授を務める。HBSで提供されている新任CEO向けワークショップ(New CEO Workshop)の共同設立者でもある。
・ゲイリー・バーニソンは、組織コンサルティング会社コーンフェリーのCEOだ。
本誌がとりわけ知りたいと思ったのは、「CEOを目指す人が、複雑化する世界で経営者として成功するために、いま、重点的に身につけるべきスキルや行動は何か」だ。また「このようなスキルを身につけるために、組織はどのようなサポートができるのか」という点である。
本稿では、3人の回答を紹介しよう(正確を期するため内容を編集している)。
ジニー・ロメッティ:スキルだけでなく、態度を重視せよ
AIの台頭や世界の地政学的な分断、インクルージョン(包摂性)に対する期待の高まりは、リーダーシップのあり方を大きく変えつつある。CEOを目指す人は、常に変化する環境を乗り切るために、「具体的」なスキルだけではなく、態度を重視すべきだ。そこで重点を置くべき領域は主に3つある。
オリンピック選手レベルの学習者になる
私がIBMのCEOに就任した時、IBMはテクノロジー環境の急変に直面しており、ビジネスモデルを進化させる必要があった。そこで私は、オリンピック選手のトレーニングと同じアプローチを取った。つまり反復練習をし、ストレッチを行い、周囲の意見を求めた。すべての疑問に答えられる必要はない。重要なのは、正しい問いかけをすることであり、他の人も安心して同じようにしてよいと感じられる文化をつくることだった。
そこでIBMは、全従業員に40時間の学習を義務づけた。学習を会社の業務の一部にし、成長を促す文化の触媒にする狙いもあった。私自身、4年にわたり、毎月の研修の最初の1時間の講師を担当した。これは象徴的な意味合いのためにやったことではない。破壊的イノベーションの時代には、継続的な学習はオプションではなく、組織のあらゆるレベルで必要不可欠であることを示すためだった。