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上司に対する愚痴を上司本人に送ってしまったら
筆者のクライアントであるアレックスは、そのメールを上司に見せるつもりはまったくなかった。チームミーティングで彼のアイデアがまたしても却下されて士気をくじかれ、いら立っていた。そこで彼は同僚に「彼女は自分の『お気に入り』の意見以外はすべて却下する」と愚痴をこぼした。「自分がこのチームにふさわしいと証明するのは、本当に疲れる」
そして彼は送信ボタンを押したが、数秒後、誤って上司をCCに入れてしまったことに気がついた。メッセージの取り消しは間に合わなかった。
すぐに返信はなかった。直接対立することもなかった。しかし、その翌週、アレックスは重要な顧客とのミーティングから外され、その次のミーティングにも呼ばれなかった。上司との週に一度の1on1ミーティングも突然キャンセルされた。ようやく上司と話すことができた時、彼女はそっけない態度で、ほとんど目を合わせようとしなかった。
アレックスは、自分の不注意と感情によって一線を越えてしまったことを悟った。自分と上司との信頼関係を傷つけてしまい、修復しなければならなかった。私たちは計画を練り、彼は関係を再構築するために以下のプロセスを踏むことにした。
対応する前に客観的に内省する
状況を明確にしないまま謝罪したり、対立したりすると、事態を悪化させるおそれがある。間違いがどのようにして起きたのか、自分の感情がどのように影響したのか、自分の行動がどのように受け止められる可能性があるのかを、しばらく内省することが極めて重要だ。次の行動を決める前に、全体像を理解することがカギとなる。
こう自問しよう。「なぜこれほどフラストレーションを感じたのか」「間違いにつながった事実は何か」「他にどのような行動ができたか」。精神的な緊張の原因となった行動を特定し、上司も同じようにそれを認識しているかどうかを考える。
アレックスは自分が失敗したことをすぐに理解した。しかし、上司のオフィスに駆け込んで謝罪するのではなく、誤ってメールを送ったという事実に加え、自分の行動と上司に対する感情について内省した。すると、会議で意見を却下されたと感じると、以前の職場で過小評価された時の深い感情的な反応を引き起こし、それが衝動的なメールにつながったことに即座に気づいた。そうして、上司の意図は彼を退けることではなく、会議を時間通りに進めることだったのかもしれないと理解することができた。
会話は早いほうがよい
上司との間で間違いを犯した時、時間が経てば解決するだろうと会話を避けても、うまくいくことはめったにない。沈黙はそれ自体がメッセージとなり、回避、防衛、あるいは責任の欠如と解釈されることが多い。さらに、ボディランゲージが変化したり、チェックインが省略されたりすると、不快感を示す静かなシグナルが積み重なり、感情的な距離が広がり、それは後で埋めるのがより困難になる。
だからこそ、間違いが起きてから24~48時間以内に会話をすることが非常に重要だ。内省し、冷静になる時間が得られると同時に、問題に正面から対処する成熟度と緊急性を示すことができる。
アレックスは24時間ほど待ってから、シンプルな言葉で1on1を依頼した。「少しお時間をいただけますか。重要な件でお話ししたいことがあります」
アレックスは、却下されたという自分の認識を含め、すべてをすぐに解決する必要はないとわかっていた。しかし、迅速に行動することで、自分の行動に責任を持つことに真剣であることを示した。長く待ちすぎると問題が必要以上に大きくなるか、最悪の場合、後で覆すのが難しい固定観念を上司に植えつけるおそれがある。
必要以上に説明せず、責任を認める
責任を負うことで信頼は築かれる。言い訳や責任転嫁はそれを損なう。したがって、目指すべきは、誠実に謝罪することだ。簡潔に話し、卑屈にはならないこと。リーダーが重んじるのは誠実さであって、不安定さではないからだ。
アレックスは、自分の感情的な反応を自覚していたため、行動を正当化することなくその責任を負うことができた。まだフラストレーションを感じていたにもかかわらず、自分の行動を軽視したり、上司に責任を転嫁しようとしたりしなかった。簡潔に表現し、その影響に焦点を当てた。「私のメールは不適切でプロフェッショナルさに欠けるものでした。フラストレーションに負けてしまったことを、自覚しています。私はあなたとの関係性を大切にしており、信頼を回復するために尽力します」
それだけだった。明確で、直接的だ。過剰な説明もなく、「でも私は退けられたと感じています」などと持ち出すこともなかった。会話を「告白」ではなく「協働」として位置づけることで、行動の正当化を避けることができる。さらに、意図だけでなく影響を認めることで、上司はあなたがその会話について熟慮したことを理解するだろう。
前進するための道を提案する
アレックスは自分の責任を示した後、会話を過去から未来へと移した。心からの謝罪は後悔を示すが、前進する方法を提示することは、成熟度、主体性、そして感情的知性(EI)を示す。「取り返しのつかないことをしました」とただ言うのではなく、「こうすればさらによくなると思います」と述べるのだ。
会話が進んだら、信頼を再構築し、関係を改善するための出発点として、前進する方法を提案する。それを、協働や意見を求めるものとして位置づけるのだ。たとえば、「今後、懸念事項の伝え方についてより気を配り、前向きな貢献ができるよう、直接お伝えするようにしたいと考えています。フィードバックをぜひいただきたいです。もし私に具体的に求めていることがあれば、ご指導ください」
このアプローチによって、対話と協働の扉が開かれる。それは、あなたが単にダメージコントロールをしようとしているのではなく、成長し、間違いから学ぶことに力を入れていることを示す。
言葉よりも行動が信頼を回復させる。コミュニケーションにおいて、常にプロフェッショナルさを保ち、最後までやり遂げることを意図的に心がけるべきだ。それは、受動攻撃的な行動や噂話、防衛的な態度のない、感情的な成熟度を継続的に示すことにつながる。
時間をかけて関係を再構築する
信頼は一度の会話では回復しない。それは一貫した日々の行動を通じて再構築される。自分の過ちを認め、前進する方法を提案した後に、本当にやるべきことが始まる。プロフェッショナルさ、最後までやり遂げる姿勢、感情的な成熟さを日々示すことだ。会議では集中し、自分の口調に気を配り、準備を整え、プレッシャーの下でも冷静さを保つ。迅速に返答する、上司の優先事項をサポートする、解決策を提示するといった小さな行動が、時間をかけてあなたについての新しいストーリーをつくっていく。親密さを強制したり、好意的な態度が即座に得られることを期待したりしてはならない。信頼性と尊敬に焦点を当てる。あなたの行動が、静かながらも明確に「あなたは私を信頼することができる」と語るようにするのだ。そうすれば、評判は修復され、関係が新たに構築される。
* * *
アレックスはここ数週間、上司との信頼関係をゆっくりと再構築している。上司が会議で再び彼のアイデアを却下した時も、アレックスは1on1まで待ち、その却下の理由を好奇心を持って深く掘り下げた。防衛的に反応するのではなく、耳を傾け、質問をした。結果だけでなく、関係性に焦点を当てた。
断絶した上司との関係の修復は、そこから学んだことを示し、次に同様の状況が起こった時にその学びを実践できれば、より早く進む。アレックスは感情のコントロールと謙虚さを示し、関係がまだ危ういと感じられる時でも、逃げずに直面する勇気を示した。職場では誰でも間違いを犯す。あなたのキャリアを定義するのは、間違いそのものではなく、あなたがそれにどのように対応し、再構築するかだ。
"You Lost Your Boss's Trust. Now What?" HBR.org, July 15, 2025.






