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メンバーが自力で問題解決するのを手助けする5つの問い
ある会社でセールスリーダーを務めるスベンという人物の元に、ある大口顧客から電話がかかってきた。その顧客は激怒していた。注文した商品の納入が期限より遅れた、商品に傷がついていた、請求書に記された金額に、四半期ごとのニュースレターに書かれていた大口割引が反映されていない、というのだ。
スベンは途方に暮れてしまった。顧客から指摘された問題を解決するには、他の部署の力を借りなくてはならないが、社内の官僚主義的な体制が理由でそれは容易でない。しかも、最近の人員整理と経済的不確実性の増大により、スベンはミスを犯すことを極度に恐れていた。そこで、上司のローラに相談した。筆者の顧客であるローラは、その会社の最高売上責任者の職にあった。
ローラは、スベンが状況を詳しく説明する間、じっくり耳を傾けた。そして、こう問いかけた──「私がどのようなサポートをする必要がありますか」。
すると、スベンは、「問題の顧客と話してもらえませんか」と言った。
ローラは、スベンがこの問題に自力で対処する能力を持っているとわかっていた。しかし、サポートしてくれなかったとか、見捨てられたと思われることは避けたかった。そこで、スベンの要望を受け入れることにして、自身の1日の「やるべきことリスト」に「#143」という項目を書き加えた。
この時点では、2人とも安心感を得ることができた。スベンは、ローラが問題を解決してくれると感じて安心し、ローラは、「厳しい局面でしっかりサポートしてもらえた」とスベンを満足させることができたと感じて安心した。しかし、やがて同様のパターンが繰り返されるようになり、安心感は次第に薄らいでいった。ローラは急速に燃え尽き状態に陥り、スベンは自分の担当顧客との関係で無力感を抱くようになった。そして、ビジネスの成果も落ち込み始めた。
こうしたパターンは、筆者がコーチングを実践する中で、たびたび目の当たりにしてきたものであり、学習性無力感と決断疲れに関する学術研究でもしばしば指摘されている。このような状況は、意思決定のボトルネックをつくり出し、メンバーの当事者意識を弱め、マネジャーの燃え尽きを加速させる。