経営幹部の離職を食い止める3つの戦略
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サマリー:VUCAと呼ばれる先行き不透明な環境下で、企業の持続的成長には経験豊富な幹部の存在が不可欠である。しかし、調査によれば半数以上の幹部に離職意向があり、その主な理由は引退や燃え尽き症候群からキャリアへの懸念... もっと見るへと変化している。本稿では、幹部の離職を防ぎパフォーマンスを維持するために組織が取るべき3つの行動を解説する。 閉じる

組織幹部の半数以上が「今後2年以内に現職を辞める可能性が高い」と回答

 この5年間は、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)を合わせたVUCAと呼ばれる環境が、組織の進歩だけでなく存続そのものを脅かし、ビジネスリーダーにとって試練の時となった。

 経験豊富な経営幹部を擁することは、パフォーマンスの維持に不可欠だ。2024年10月にガートナーが経営幹部200人を対象に実施した調査では、彼らの平均在職期間が5年以上の企業は、幹部の在職期間が短い企業と比較して、収益や顧客体験などの主要指標で優れていることが明らかになった。

 しかし、上級幹部を維持することはますます困難になっている。ガートナーの調査では、幹部の半数以上(56%)が今後2年以内に現職を辞める可能性が高い、または非常に高いと回答した。そして、4分の1以上(27%)が半年以内に辞める可能性が高い、または非常に高いと答えた。さらに憂慮すべきは、高いパフォーマンスに不可欠なベテランの幹部は、新しい幹部よりも2年以内に退職する可能性が約40%高い。

 経営幹部の離職を抑制し、パフォーマンスを維持しようとする組織は、以下の3つの行動に焦点を当てる必要がある。

1. 幹部の不満の原因を特定する

 従来、経営幹部は退職の主な理由として、引退やバーンアウト(燃え尽き症候群)を挙げていた。これらはいまでも重要だが、現在の彼らの離職要因はこれだけではなく、最も重要な要因でもない。実際、2024年10月のガートナーの調査では、今後2年以内に退職を考えている幹部のうち、引退を計画しているのはわずか17%だった。仕事上のストレス、ワークライフバランス、メンタルヘルスといったバーンアウトに関連する要因は、離職意向が高い幹部(積極的に転職活動を行っている、または今後1年以内に転職活動を計画している)が挙げた10の要因のうち、それぞれ5位、6位、7位に留まった。

 現在、多くの幹部は単に新しい挑戦を求めていることがわかっている。全体として、幹部が現在の役職を辞める理由として挙げたのは、キャリアアップの機会(2024年10月調査で1位)、組織文化との不一致(2位)、より高い報酬(3位)、仕事への不満(4位)といった、成長に関する懸念だった。

 潜在的な離職を防ぐには、組織は幹部の不満の原因を正確に突き止める必要がある。これには、CHRO(最高人事責任者)がCEOと協力して、個々の幹部が何に満足し、何に不満を感じているかを理解することが最も効果的だ。

 具体的に、CHROは以下のことを行うべきだ。

・CEOに、幹部の満足度や成長目標について1on1ミーティングや非公式な場で尋ねるよう促す。

・チームの決定に対する反発や、特に自然発生的なやり取りでの幹部のコミュニケーションスタイルの急激な変化など、不満の兆候に注意を払う。

・懸念を抱いている可能性のある幹部に共感を示し、CEOにその懸念を伝えるよう促す。

・経営幹部全体の状況に関する洞察をCEOに提供する。その際、機密性を保つために個々の懸念を匿名化するよう注意する。

2. リテンションの基準を定める

 幹部のリテンションには費用がかかることがあり、彼らが競合他社から引き抜きを受けている場合はなおさらだ。また、すべての幹部が組織のパフォーマンスに等しく貢献しているわけではない。

 リテンションの取り組みの対象を絞ることで、組織は重要度の低い幹部のリテンションのための過剰な支出を防ぐことができる。どの幹部を維持すべきかを判断する際に使用する「唯一の正しい」基準はない。CHROとCEOは、組織の優先事項、目標、戦略に最も適した基準を選択する必要がある。考えられる基準の例を挙げよう。

・ハイパフォーマーのリテンション:パフォーマンスの高い幹部を維持することに重点を置くことは、全体的なパフォーマンスを維持するための最善のアプローチかもしれないが、こうした幹部は退任する際の選択肢が多いため、最も費用がかかることが多い。

・重要な能力を持つ人材のリテンション:技術的な能力や組織の知識など、組織の成功に不可欠な能力を持つ幹部は、後任を探すのがよりコストがかかる可能性がある。

・潜在能力の高い人材のリテンション:過去のパフォーマンスに貢献した幹部ではなく、将来の成長を牽引できる幹部のリテンションに焦点を当てることは、その幹部と組織の双方にとってよい結果をもたらす。こうした幹部は成長の機会にも最も関心がある可能性があるためだ。

3. マルチチャネルのリテンション戦略を構築する

 幹部が何を求めているか、何を必要としているか、そしてどの幹部を維持したいかを深く理解することで、組織は対象を絞ったリテンションの取り組みを実行できる。

 多くの場合、CEOと取締役会がまず考えるのは、不満を抱いている幹部の報酬を増やすことだ。これは競合する外部からのオファーに対抗するのには役立つかもしれないが、それ以外の理由で転職を考えている幹部を引き留めるには効果が薄いだろう。

 幹部の幅広い期待やニーズに対応するマルチチャネルのリテンション戦略は、単純な報酬ベースの戦略よりも効果的だ。さらに、コーチングなど低コストの活動を中心としているため、より効率的かもしれない。

 このマルチチャネル戦略の概念化と実行の両方において、CHROは重要な役割を担う。具体的には、CHROは以下の方法で、幹部が抱いている成長の機会や文化に関する懸念を軽減できる。

・キャリアコーチの役割を担う:CHROは、幹部を社内外の能力開発リソースに結びつけるのに適した立場にいる。同じ幹部として、彼らの独自のニーズに合わせてこれを行うことができる。

・CxO(最高責任者)とCEOの関係を強化する:CHROは、同僚の幹部がCEOとの信頼関係を築く手助けをし、個人の成長に関する懸念を和らげたり、新しい機会に関する会話を円滑にしたりすることができる。

・メンタルヘルスとワークライフバランスをサポートする:多くの組織で幹部のバーンアウトが課題となっており、CHROは同僚の幹部が仕事のストレスの原因を特定するのを助け、メンタルヘルスやワークライフバランスの福利厚生制度を利用するよう促すことができる。

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「過去のパフォーマンスは将来の結果を保証しない」という格言があり、VUCAが続く環境ではなおさらだ。この5年間の変動の中でも、組織は驚くほどよい成果を上げてきたが、予想される幹部の離職を無視すれば、将来のパフォーマンスを危険にさらす。上記の3つの戦略を理解し、実行することで、組織は幹部の離職を食い止め、現在と将来のパフォーマンスを推進するために必要な幹部チームを維持することができる。


"3 Ways to Mitigate Executive Turnover," HBR.org, July 18, 2025.