仕事を部下に任せられないリーダーが見直すべきタイムマネジメント
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サマリー:リーダーにとって「委譲」は避けて通れないテーマである。多くのリーダーはその必要性を理解していても、実際にどの業務を委譲すべきかの判断に苦慮しがちだ。そこで有効なのが、日々の業務を可視化する「タイムログ... もっと見る」の手法である。客観的なデータを記録・分析することで、委譲すべきタスクや委譲可能なタスク、あるいは自動化・削除すべきタスクを特定し、戦略的な業務に時間を再配分できるようになる。本稿では、このタイムログを活用した委譲のステップと、その実践方法について解説する。 閉じる

あなたは部下に業務を任せているか

 筆者がエグゼクティブをコーチングしてきた20年間を通して、ほぼすべてのリーダーシップ層で問題になるテーマがある。それは、権限の委譲に関する問題である。大半のリーダーは権限委譲の必要性を理解しており、具体的な方法を知っている人も多い。彼らにとっての難題は、「どの業務」を委譲すべきかわからないという点にある。

 エグゼクティブに「どの業務を委譲すべきだと思うか」と問うと、他人に任せても大丈夫そうなタスクを記憶の中から必死に探そうとするが、その際に重要なタスクを挙げる人はほぼいない。結局、リスクの低いタスクをいくつか手放そうとするだけで、中身のある有意義な仕事を他者に任せるチャンスを逃してしまう。

 現実には、多くのシニアリーダーが、些細に見えるが驚くほど時間を取られ、しかも、かけた時間に見合うだけの価値を生まないタスクに追われている。要するに、そうしたタスクは、より戦略的で投資対効果の高い業務に充てられるはずの貴重な時間をシニアリーダーから奪っているのである。

 そうしたタスクを可視化し、測定するために、筆者はクライアントに、古典的な時間管理ツールである「タイムログ」を活用して、効率の悪い点や重複した業務を特定するよう勧めている。記憶に頼る代わりにタイムログを使うことで、実際にどのような業務に時間を費やしているかがデータで可視化される。

 筆者が先日、コーチングを行ったCFO(ここではマイクと呼ぶ)の例を見てみよう。社内のコーポレートコントローラー(経理・財務担当者)のポジションからCFOに昇進したマイクは、時間の配分を見直すべきだと頭では理解していたが、どの業務をチームに委譲できるのか判断できず苦心していた。そこで、2週間分のタイムログデータを記録したところ、以前の職務から持ち越しているタスクが即座に明確になった。CEO向けに提出し続けていた報告書、後任のコントローラーに伝えていなかったいくつかの照合作業、さらには、自分で出席していたがチームメンバーに任せるほうがよさそうな複数の会議。すべて合わせると、月に約20時間分のタスクと会議を部下に委譲できることが明らかになった。タイムログによる学びが極めて大きいことを知ったマイクは、直属の部下全員にも同じようにタイムログを記録するよう求めた。

 面倒に思えるかもしれないが、タイムログは1日の中に自由になる時間を生み出し、より戦略的な業務に回せるという点で非常に効果的な方法だ。実行する際には、「記録」「分析」「委譲」「振り返り」の4つのステップを踏むことを推奨したい。

記録

 まずスプレッドシートを作り、業務時間を15分単位に区切ろう。時間枠を10分ごとに狭めたり、30分単位に広げたりしてもかまわないが、60分単位に広げるのは細かなタスクが見えなくなってしまうため推奨しない。