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Switch 2に見る任天堂の戦略の変化
前回は、任天堂がこれまで数々のゲーム機を大ヒットさせてきた一方、同社の業績はその売れ行きに大きく左右されること、具体的にはどのような要素が業績に大きな影響をもたらすのかを見てきました。
2006年に発売したWiiは大ヒットを記録しましたが、その後継機Wii Uは前作の成功を引き継ぐことができず、売れ行きは伸び悩みました。その教訓を踏まえ、コロナ禍の巣ごもり需要の追い風もあって大ヒットとなったSwitchの成功を、後継機であるSwitch 2でどのように再現するかが現在の任天堂にとっての最大の焦点でした。
結果は、同社が発表した2026年3月期の売上高予想が「1.9兆円」と過去最高を見込んでいるように、Switch 2の戦略は狙い通りにユーザー需要を喚起できているようです。
では、任天堂がSwitch 2の発売に当たって描いた戦略とは、いったいどのようなものだったのでしょうか。
スペック面でも機能面でも、Switchと比べていくつかの進化や変化が見られますが、Switch 2は基本的には「Switchをベースにしたアップデート版」であり、たとえるならばiPhoneが毎年アップデートされるような変化に近いものといえます。
この変化は、WiiからWii U、ニンテンドーDSからニンテンドー3DSのように、コンセプトそのものを変えたり、遊び方を変えたりするようなこれまでの任天堂のゲーム機の継続機のつくり方とは、根本的に異なります。
また、新たにゲーム機が発売される際には、ソフトの発表が重要です。過去にはソニー・コンピュータ・エンタテインメントがPlay Station4を発売した際、新作ソフトがあまりないことからロケットスタートを切れなかったという事例もあります。それに対して今回のSwitch 2では、図表1のようにSwitchのソフトのアップデート版とも言える「Switch2 Edition」の発売が準備されています。

出所:任天堂 2025年3月期 決算説明資料より。
以上の点を見ても、任天堂がいかにSwitchのユーザーにSwitch 2へとスムーズに移行してもらうことを重視していたかがおわかりいただけるでしょう。
実は、任天堂のゲーム機の歴史の中で機種名に「2」という番号がついたのはSwitch 2が初めてです。これまでの任天堂のゲーム機は、後継機であっても基本的にはコンセプトを大きく変えて、ユーザーに新たなゲーム体験を提供するものが中心でした。つまり任天堂はSwitch 2において、これまでのやり方から戦略を大きく変えたことになります。
ここで大切なことは、画期的なゲーム機を開発して世間をあっと言わせることよりも、既存のユーザーも安心してこれまで通りSwitchを遊べるゲーム機をつくること。言い換えるならば、「破壊的イノベーション」ではなく「持続的イノベーション」を優先させるということです。任天堂が見込む「1.9兆円」という過去最高の売上高は、以上で見てきた策が見事にはまった結果と見ることができます。
加えて、Switch 2は初代よりもさらに単価が上がっています(図表2)。こうした要素ももちろん、過去最高の売上高を下支えする要因となっています。

出所:筆者作成。
なお、Switch 2の多言語対応モデルの価格は、Switchの通常モデルの2倍以上にもなります。実は、Switchの全世界販売台数1.5億台のうち約76%(1.15億台)が海外で売れていることから、任天堂の売上高においてはSwitch 2の多言語対応モデルが主力商品になるのです。
売上高1.9兆円の内訳を推定してみる
これらの点を踏まえて、では任天堂が予想する2026年3月期の売上高「1.9兆円」はどのような構成になりそうかを、フェルミ推定してみましょう。
推定をするに当たっては、以下のように仮定を置くことにします。