採用面接は、候補者の能力を正しく評価していない
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サマリー:採用面接を分析すると、企業が求める要件、職務記述書、そして面接での評価の間に大きなギャップが生じている実態が浮かび上がる。特に、AI時代に不可欠なスキルが候補者に備わっているかどうかは、ほとんど確認され... もっと見るていないことがわかった。採用に整合性を欠く現状は、自社に適格な人材を逃すリスクになりかねない。本稿では、データでこのギャップが起こる実態を解明し、企業が採用プロセスを改善するために何をすべきかを提言する。 閉じる

採用面接は脱線しがち

 毎年、何百万人もの求職者が職務記述書を注意深く分析して、企業が重視する(と書いてある)スキルや資格を満たす履歴書を送っている。その一方で、採用マネジャーは、求職者の資格を自分がきちんと評価していると信じて、いくつもの面接をこなしている。

 だが、採用の仕組みに関する基本的な思い込みが間違っていたら、どうなるだろうか。

 こうした問いに、推測ではなくデータに基づき、初めて答えることができるようになった。面接の録音、録画技術や文字起こし技術の進歩により、採用というブラックボックスの中を覗き込み、求職者と面接官が面と向かった時、実際に何が起きているかを理解できるようになったのだ。その結果、業界を問わず、採用決定にマイナスの影響を及ぼしている可能性のある問題が明らかになった。

 これは、AI面接インテリジェンスを提供するブライトハイア(BrightHire)が、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の「マネージング・フューチャー・オブ・ワーク」プロジェクトと共同で実施した包括的な分析から導き出された結果だ。対象となったのは、計44社の1311ポジションをめぐる2万3000件の面接記録である。その結果、職務記述書は雇用主が求める資質を詳細に示しているのに、面接はそこから脱線しがちであることがわかった。また、AIの普及によって、求められるスキルが前例のないスピードで変わっているにもかかわらず、企業は採用候補者にAIを扱った経験があるかどうかをほとんど評価できていないことがわかった。

体系的な評価という錯覚

 数字は一見したところ、心強い印象を与える。一次面接では、職務記述書に記載されているスキルの80%近くが話題になる。二次面接では91%だ。これは、表面的には、採用プロセスが意図した通りに機能していることを示唆している。つまり、明確に定義された基準に照らして、求職者を体系的に評価しているように見える。

 ところが、この表面的な分析は、より懸念される現実を覆い隠している。面接でスキルが話題になったかだけでなく、それが有意義に評価されたかどうかを調べると、大きく異なる現実が見えてきたのだ。面接によって差異があることや、スキルの種類によって違いがあることがわかってきた。コミュニケーションやコラボレーションなどのソフトスキルは、複数にわたる面接プロセスの76%で話題になった。ところが、技術的なスキルと経験の要件(求職者の最も重要な差別化要因であることが多い)が深く評価された時間は、全面接時間の55%にすぎなかった。五次面接を経た後でも、評価したのは66%だった。

 さらに、この調査では、一次面接でスキルが話題になったとしても、二次面接以降でも同じスキルが話題になるケースが多いことがわかった。すべてのスキルカテゴリで、十分に話題になったスキルの72%が、後で再び話題として取り上げられたのだ。話題に上る回数は、各スキルにつき平均1.2回だった。つまり採用チームは、多くのスキルを評価する時間がないわけではなく、同じスキルを何度も話題にしている。その原因が、採用プロセスに規律がないからか、特に重要だと考えられているスキルに過度に注目しているからかはさておき、最終的な結果は同じだ。つまり、このような採用プロセスは、求職者の資質を十分検討することなく採用決定を下すことにつながっているおそれがある。