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ライバルに関するメッセージが与えるマーケティング効果
「ペプシは置いていないんだ。コーラでいいかな」(We don’t have Pepsi, Coke OK?)と、ペプシコがツイートしたのは、2019年のこと。6つの単語だけで不気味なストーリーを語る英語の遊び「シックスワードホラー」に挑戦したという建前だった。それは飲食店でのやり取りに関するジョークであるだけでなく、ライバルブランドという、強烈に魅力的なナラティブを活用したマーケティング戦略だった。
マーケティング業界では、ライバルを批判するようなメッセージは発しないほうがよいというのが定説になっている。だが、筆者らの最近の研究(2024年4月に『ジャーナル・オブ・マーケティング・リサーチ』誌に掲載)では、本物のライバル(歴史的に競争関係にあるブランド)に関するものであれば、定説が覆ることが明らかになった。
筆者らは100のブランドについて、2020~2022年のツイッター(現X)のデータを分析した。対象になったのは、清涼飲料水や携帯電話会社、スポーツチームなど20の製品カテゴリーだ。さらに、米国の消費者数千人を対象とする対照実験も行った。その結果、マーケティングのメッセージで、単なる競争相手でなく、ライバル関係にある企業や製品に言及すると、消費者のエンゲージメント(と購買意欲)が著しく高まることがわかった。
また、ライバルに関するネガティブなメッセージは、ポジティブなメッセージよりも大きなマーケティング効果があることもわかった。忠実な顧客の間では特にそうだ。
ライバルというナラティブの威力
すべての競争が、対等なライバル間の競争というわけではない。サムスンは数十のスマートフォンメーカーと競争しているが、マーケティング上、最も激しい攻撃の対象となっているのがアップルだ。Tモバイルも複数の通信会社と競争しているが、最も消費者の印象に残る攻撃相手はベライゾンだ。そして、バーガーキングは、どのファストフードチェーンよりも、マクドナルドに「おいしい」攻撃を仕掛けてきた。
こうした事例は、ライバル関係の独特のパワーを示している。一般的な競争とは違って、ライバル関係にはライバル同士の間に共通の歴史があるうえに、際立ったキャラクター(競合するブランド)と魅力的なプロット(長年にわたるトップ争い)という、説得力のあるストーリーに不可欠の要素が揃っている。ライバルブランドに言及するメッセージに遭遇した消費者は、長年にわたるライバル関係とすぐに結びつけ、いちだんと有意義で魅力的なメッセージだと感じる。
筆者らの研究は、「ライバル関係言及効果」と呼ぶものを示している。ブランドが公開メッセージで、ライバルと、ライバルとまでは言えない競争相手に言及すると、消費者のエンゲージメントが大幅に高まる。これは消費者が、ライバル関係への言及を、現在も続く幅広い競争関係の一部と認識することで得られる効果だ。






