突然、部下が増えたリーダーが燃え尽きないための5つの戦略
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サマリー:多くの企業がコスト削減や意思決定の迅速化のために、中間管理層を削減し組織をフラット化しているが、突然、大規模化したチームを率いることになったリーダーには重圧がのしかかっている。筆者らはこの現象を「リー... もっと見るダーシップ・アバランシュ」(雪崩)と呼び、リーダーが燃え尽きずにチームを機能させるには明確な戦略が不可欠だと指摘する。本稿では、筆者らの経験から導いたチームの規模拡大に対応するための5つの戦略を提示する。 閉じる

組織のフラット化で管理職は減り、担当範囲が拡大

 不確実な経済情勢の中、コスト削減や意思決定の迅速化を図るために、中間管理層をなくし、組織をフラット化する企業は多い。2023年と2024年だけでも、メタ・プラットフォームズ、グーグル、アマゾン・ドットコムなどの企業が数万人の従業員を解雇し、職種を統廃合してチームを縮小し、管理職の担当範囲を拡大した。

 組織図上は効率的に見えるかもしれないが、突然大きなチームを統括することになった上級リーダーにとっては、かなりの重圧である。スラックのメッセージは山積みになり、一対一の面談は増え、あらゆる想定外や緊急事態があなたのデスクに降りかかる。

 筆者らはこの現象を「リーダーシップ・アバランシュ」(雪崩)と呼んでいる。明確な戦略なしでは、スケーリング(規模拡大)は足かせになる。エグゼクティブコーチと基調講演者(ランディス)、エグゼクティブアドバイザーと人材開発の専門家(フェルナンデス)として、数多くの企業の重要な組織変革を支援する中で、このパターンが繰り返されるのを目の当たりにしてきた。本稿では、筆者らが行き着いた、リーダーがチームの規模拡大に対応するのに役立つと実証済みの5つの戦略を紹介する。

1. 一緒にこれまでのやり方をリセットする

 チームの規模が突然拡大しても、使えるリソースが変わらない場合、何かを手放さなければならない。週次の1on1ミーティング、常時対応の態勢、すべての意思決定への関与など、これまでのルーチンに固執するリーダーは多い。しかし、少人数のチームで通用したやり方は、大人数の複雑化したチームでは機能しない。同じやり方でチームをリードしようとするのは、燃え尽き症候群(バーンアウト)を加速させるだけである。

 そうではなく、互いへの期待をリセットする。それをチームと共同で行おう。リーダーとして引き続き果たす役割(優先事項の判断、重要な場への出席、障害に対する支援など)と、変える必要のあること(即時対応、全プロジェクトへの深い関与など)を明確にする。そして、意思決定の方法や会議の進め方、対立を表面化する方法など、新しい仕事のやり方を共同でつくり上げていこう。

 筆者らのコーチングを受けたあるリーダーは、チームの統合によって直属の部下が30人になった時、「チーム・リセット・ワークショップ」を開催し、こう問いかけた。

・あなたが最高の仕事をする助けになるものは何か。
・あなたの仕事の障害になっているものは何か。
・チームワークを高めるために合意すべき点は何か。

 この話し合いから、「善意を前提にする」「リスクは早めに提起する」「緊急時以外は、午前9時前に会議を行わない」といったチーム規範が共同で策定された。これによって、全員が貢献できるようになり、摩擦が減り、心理的安全性が強化された。

 このような合意事項は、5~7項目以内に留めるべきである。チーム規範を可視化し、四半期ごとに見直し、互いに責任を果たすよう促そう。