マーケティングと財務の良好な関係が投資効率を上げる
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サマリー:CMO(最高マーケティング責任者)の在任期間は、他の経営幹部と比較しても特に短い。その背景には、マーケティングの成果をCFOらが重視するビジネス成果と結びつけられない問題がある。両者が用いる指標は異なり、期... もっと見る待の乖離がマーケティングをコストセンターと見なすことにつながっているのだ。この溝を埋め、投資効率を上げるカギは両者の連携にある。本稿では、CFOとCMOが共通の目標を持ち、予測可能な成長を実現するための具体的な方法を3つ紹介する。 閉じる

マーケティングと財務の連携で投資効率を上げる

 CMO(最高マーケティング責任者)の在任期間は、経営幹部の中でも特に短い。その理由は、彼らのマーケティング能力の低さにあるわけではない。マーケティングの成果を、財務や経営陣が重視するビジネス成果と結びつけられないことにある。

 CMOが収益拡大と効率改善の重圧にさらされているのは周知の事実だ。しかし、彼らが従来用いているKPI(重要業績評価指標)、つまりリーチ数、インプレッション数、エンゲージメント率、ブランドリフト調査などは、マーケターには有用であっても、ビジネスの最終的な成果とは直結しない。

 一方、CFOやCEO、取締役会が関心を寄せるのは、利益、予測の安定性、資本配分だ。彼らが知りたいのは、「来期、マーケティングに200万ドル追加投資すれば、どれだけの増分収益が期待できるのか」、そして「その予測にどれだけ確信が持てるのか」という点である。この問いにCMOが明確に答えられないと、期待の乖離が生じ、マーケティング予算は十分に活用されなくなる。結果として、経営陣はマーケティングを成長のエンジンではなく、単なるコストセンターと見なすようになる。

 筆者はこの構図を、グルーミングブランドのハリーズでマーケティング分析を統括した経験と、何百という企業のマーケティング・財務チームに効果測定について助言する中で繰り返し目にしてきた。そこから明らかになったのは、効果測定に関してマーケティングと財務が連携している組織は、無駄な投資を削減し、真に効果的な施策に資源を集中させることで、大幅なコスト削減を実現しているという共通のパターンだ。その解決策とは、CFOとCMOが効果測定の責任を共同で負い、両者がそれを推進することである。

CMOとCFOのよりよい関係を築く

 CMOとCFOの間に生じる溝は、それぞれが異なるプレッシャーに直面していることに起因する。CFOは来期の利益に厳しく焦点を当て、マーケティング支出から即座に、かつ測定可能な成果を求める。対照的に、CMOは短期的な業績と長期的なブランド価値構築という2つの目標の間で板挟みとなる。その結果、マーケティングの測定は、未来志向ではなく過去志向になりがちだ。したがってマーケティングチームは、今日何が業績を牽引しているのかを理解することよりも、過去のキャンペーンが成功したことを証明するために多くのエネルギーを費やしてしまう。

 しかし、マーケティング環境は常に変化し、測定には誤差が生じやすい。前期に効果があった施策が、今期も通用するとは限らない。計画、予測、実行が時代遅れのキャンペーンの仕組みに依存しすぎると、四半期ごとに実績を下回る楽観的な予測が繰り返され、財務部門のマーケティングの数値に対する信頼が体系的に損なわれていく。

 不信感のサイクルが深まると、両者はそれぞれの安全地帯に引きこもる。マーケティングは自分たちが管理しやすい指標(インプレッション数、クリック数など)に、財務は信頼する指標(収益、利益、キャッシュフロー)に固執する。結果として、どのマーケティング活動がビジネス成果を生み出しているかという点について、どちらも共通の理解を持つことができなくなる。

 この悪循環を断ち切るのに、より高度なマーケティング指標や複雑なアトリビューションモデルは必要ない。重要なのは、CFOとCMOが、「予測可能で収益性の高い成長」という同じ目標を持っていると認識することだ。CFOはシステム、利益予測、インクメンタルROI(必ずしもそう呼ぶわけではないが)といった概念で物事を考える。彼らが知りたいのは、マーケティング戦略の変更が事業にどう影響し、さまざまなマーケティングのシナリオに基づいてどのような結果の範囲が予想されるのか、だ。