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エントリーレベルの仕事がAIに代替されている
あなたも耳にしたがことがあり、おそらく実際にも体験しているだろうが、AIは私たちの働き方を変えている。十分な評判や地位、強固な人脈を持つ上級専門職なら、AIに職を奪われる危険性は比較的低いかもしれない。少なくとも現時点では。
しかし、エントリーレベルの職種については事情が異なることを示す証拠が増えている。スタンフォード大学の研究によると、ソフトウェア開発や顧客サービスといった、最もAIの影響を受けやすい分野における米国での若手従業員の雇用は近年大幅に減少している。世界経済フォーラムの調査は、若手社員の典型的な業務(報告書の草稿作成、リサーチの要約、コードの修正、スケジュール管理、データのクレンジングなど)の50~60%が、すでにAIによって実行可能であることを示している。
組織がエントリーレベルの職種を再設計すべき理由
単にコスト削減のためにエントリーレベルの職種を削減するのは、企業にとっても社会にとっても危険なほどに近視眼的だ。エントリーレベルの職種をいっせいに排除しようとする誘惑に抗うべきだという強い根拠がある。むしろ、それらの職種を再設計すべきなのだ。説得力のある理由は少なくとも4つある。
1. 将来の中堅専門職とリーダーを育成するため
有能なマネジャーやプロフェッショナルは誰しもどこかでキャリアをスタートさせている。最高のリーダーや優れた専門家は、その分野の基礎から学ぶことで、リーダーシップや重要な問題を解決するために必要なスキルと視点を獲得する。どのような職業(あるいは活動)においても、人は時間をかけて「意識的に未熟」な状態から「有能」になり、最終的には価値あるスキルにおいて「無意識的に有能」になる。この段階で、より大きな全体像を捉え、リスクの高い決断を効果的に下すことができるようになる。エントリーレベルの職種をなくすことは、この育成の道筋を断ち切る行為だ。
最前線で働いたことがなく、顧客からの苦情を処理したことも、重要な会議の議事録を作成したこともなく、業務の細かなことに苦労したこともないマネジャーを採用することを想像してみてほしい。そのようなリーダーシップは観念的で、現実からかけ離れ、危険なほど世間知らずになるだろう。自身のキャリアにおける「発見」の瞬間を思い出してほしい。似たようなパターンが繰り返されることで、重要な因果関係を垣間見ることができ、おそらくそれが、仕事や専門分野でより効果的に働くための洞察を確固たるものにしたはずだ。
簡単に言えば、今日のエントリーレベルの職種のほとんどは、2つの本質的な機能を果たしている。1つは業務を遂行させることであり、もう1つは業務を実行する人々を、組織および社会のより有能な一員へと成長させることだ。
2. 草の根からのイノベーションを促進するため
イノベーションは、しばしば業務に最も近い場所から生まれる。既成概念に囚われない若手従業員は、非効率性を見抜き、創造的な解決策を提案するのに独自の強みを持っている。テクノロジーの世界では、これを「ドッグフーディング」(自社製品を自社で試用すること)と呼ぶ。マイクロソフトが初期のワードやエクセルを社内でテストし、従業員のフィードバックを製品に反映させてから一般に公開したのは有名な話だ。
エントリーレベルの従業員も、プロセスを実際に試しながら弱点を見つけ出すことで、同様の価値を生み出す。一貫した出力を提供するAIとは異なり、人間は変動性を生み出す。これは時に厄介だが、新しいアイデアや改善の提案、そしてブレークスルーの源泉となることが多い。誰もが使える同じ機械やツールにアイデア出しを任せ、非常に似通った、あるいは同一の結果を生み出すようなアプローチでは、競争優位性を生み出すことは期待できない。






