成功している営業チームはAIエージェントをどう活用しているのか
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サマリー:エージェント型AIは、営業分野において、CRM(顧客関係管理)誕生以来の生産性革命をもたらす可能性を秘めている。単に助言するAIとは異なり、優秀な営業担当者のレプリカのようにタスクを自律的に実行できるのが特... もっと見る徴だ。このように進化するAIは、営業プロセス全体のワークフローを再定義し始めている。本稿では、営業チームがAIエージェントをどう活用しているか、優良事例を交えて紹介し、求められる組織的な変化を解説する。 閉じる

エージェント型AIで営業を全面的に変革する

 あなたの会社において、最も優秀な営業担当者の完璧なレプリカをつくることを想像してほしい。ただし、そのレプリカは、時間や場所に縛られず、人間の営業担当者の隣で常に働き続けることができる。その自律型パーソナルエージェントは、複数のチャネルで顧客と関わりながら、有望な顧客の特定、育成から商談成立までも可能だ。その優れた能力は、タスクの実行に留まらず、先を読む力にある。つまり、次の一手を読み、市場の変化に適応し、複数のシステムの情報を統合し、学習し続けるのである。

 これこそがエージェント型AIが持つ真の可能性だ。営業を全面的に変革し、顧客とのあらゆる接点を競争優位性へと転換する。

 生成AIは、実験段階から実用段階へと移行した。マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によれば、B2B営業チームの19%がすでに導入成果を挙げ、23%が試験運用または開発段階にある。しかしエージェント型AIは、その次のレベルの価値創出を可能にする存在である。AIに関するマッキンゼーが行った最新のグローバル調査によれば、最大の導入成果は、単なる業務のデジタル化ではなく、ワークフロー全体の再設計によって生まれている。エージェント型AIは、すでにリード創出から商談成立に至るB2Bの営業プロセス全体のワークフローを再定義し、それによって営業担当者のキャパシティを生み出し、成長を加速させている。

 本稿では、営業チームがエージェント型AIをどのように活用し始めているのか、マッキンゼーの調査およびコンサルティング経験から得られた優良な事例を交えて紹介する。

「教えて」から「代わりにやって」へ

 多くの営業チームは、すでにAIを活用して生産性を高めている。たとえば、予測型AIは、特定の見込み客に対して次に取るべき最善のアクション、つまりどのようなアプローチ(電話かメールか)や情報(製品特徴や販促)が購買に結びつきやすいかといったアドバイスを提示する。エージェント型AIは、さらに一歩踏み込む。次のステップを助言するだけでなく、そのタスクを自律的に実行するのだ。この変化は、リード創出とアプローチ、営業計画、顧客対応、顧客の維持と拡大の各領域で現れている。

リード創出とアプローチ

 AIエージェントは、能動的に営業担当者を支援することによって、B2B営業の最前線を再定義している。購買シグナルを読み取り、状況に応じたインサイトを抽出し、リアルタイムで次の最適なアクションを提案する。

 あるB2Bテクノロジー企業では、AIに営業担当としてTOFU(見込み客との最初の接点)を自律的に管理させた。リードスコアリング(購買意欲の数値化)に始まり、行動シグナルを分析してどのウォームリードが顧客に転じる可能性が高いかを特定する。各リードについて購買履歴、利用傾向、推定される関心度などのデータをもとに、個別のアプローチメールを生成し、大量のメッセージを送信する。このデータに基づく個別対応により、返信率は6%上昇した。返信があると、エージェントは文面を解析し、購買意図を判断し、会話を続ける。質問に答え、反論に対処し、商談へと誘導する。そして、有望と判断した見込み客を人間の営業担当者に引き継ぐ。営業担当者は、CRM(顧客関係管理)上に保存された全対話履歴により、背景を把握したうえでフォローアップできる。優先順位づけ、データに基づく個別対応、リアルタイム対話管理を組み合わせた、この体系的プロセスによるコンバージョン率増加と営業担当者のキャパシティ創出により、年間5000万ドルの追加収益が見込まれている。

営業計画と顧客対応

 販売の段階では、AIエージェントは、実行の効率化、関係者間の調整、コンプライアンスの確保などを支援する。これまで時間がかかっていた見積書や提案書の作成も自動化され、顧客ニーズに沿った形で提供する。マッキンゼーの最新のB2B パルスサーベイでは、特に建設、海運、化学など製品ポートフォリオが複雑、またはリードが膨大な業界でこうした能力が大きな価値を発揮していることが示された。