仕事と人生における目標を調和させ、達成する方法
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サマリー:人生においてキャリアや家族など複数の目標は必ずしも対立するものではない。筆者らの研究によれば、目標同士が相互に促進・補完し合う「シンフォニー」として捉え、そのつながりを意識的に見出すことで、モチベーシ... もっと見るョンや生産性が高まり、ストレスが少なくなり、バーンアウトしにくくなるという。本稿では、この研究結果をもとに、より生産的に、そしてより少ない犠牲で目標に向かう方法を解説する 閉じる

複数の目標のうち、どれかを「選択する」のではなく「織り交ぜる」

 マリー・キュリーは、化学と物理学における先駆的な業績で2つのノーベル賞を受賞し、科学界に大きな功績を残しただけでなく、献身的な母親でもあった。夫ピエール・キュリーの早すぎる死後、当時わずか1歳と8歳だった幼い2人の娘を一人で育てた。彼女は科学者としての役割と、シングルマザーとしての役割の間で葛藤しただろうか。そうかもしれない。しかし、彼女が2つの役割を調和して共存するものとして捉え、娘たちを科学の世界へと導いたとも考えられる。その結果、彼女の長女もまたノーベル化学賞を受賞した。

 人生においては、複数の目標を追求することが求められる。家族、健康、余暇、地域社会、そしてキャリアを深く大切にしている人もいるだろう。これらの目標がその人自身を形成し、その中のどれか一つを手放すことは、自分の一部を失うように感じられる。多くの目標を同時に抱えることは避けられないが、それらの間で葛藤を感じる必要はない。

 筆者らの新しい研究で、キャリアの追求とそれ以外の目標とがたえず衝突するわけではないことが明らかになった。ワークライフバランスを求めることで、人生が常に不協和音を奏でているかのように感じる必要はないのだ。それはシンフォニーのように感じられるものなのである。

 10カ国、11のサンプルを対象とした筆者らの調査では、複数の目標の関係をどう捉えるかが重要であることがわかった。特に、目標の調和を最も感じている人は、目標を次のいずれかの方法で捉える傾向がある。一つは、ある目標が別の目標を促進する(キャリアでの成功が休暇の資金につながるなど)と考える。もう一つは、ある目標での成功が別の目標を補完する(休暇を楽しむことでリフレッシュし、よい仕事をする準備が整うなど)と考えるのだ。

 ほとんどの人は、少なくとも人生のある時期には、目標の調和を経験している。しかし、目標との間により多くのつながりを見出すことができる人は、つながりを見出せない人、あるいはそこに葛藤さえ感じる人と比べ、多くの利点があることを筆者らはさまざまな研究を通じて発見した。そうした人は、目標により専念し、モチベーションのレベルも高く、生産的で、ストレスが少なく、バーンアウトしにくく、将来に対する期待感が大きいのである。さらに、このつながりを築く習慣は、学習可能であるという証拠も得ることができた。本稿では、この研究結果をもとに、より生産的に、そしてより少ない犠牲で目標に向かう方法を解説する。

目標の調和を生み出す方法

 複数の目標との間に調和を生み出すための第一歩は、それらを精神的に統合し、目標同士がどのように関連しているかを想像することである。筆者らのある研究では、オンラインワーカーに対して、仕事と余暇の目標、健康と経済の目標、家族と地域社会の目標がどのように関連するかを考えてもらった。2つの目標のつながりを特定するだけで、目標間の葛藤について考えた別のグループと比べ、目標の調和感が22%増加した。参加者の考察の中には、特に示唆に富むものがあり、彼らは以下のように記している。

・「よりリラックスすることで、より効率的に働けるようになる」(仕事と余暇の組み合わせ)

・「健康でいればいるほど、貯蓄が増える」(健康と経済の組み合わせ)

・「両親と一緒に教会のボランティア活動に参加できる」(家族と地域社会の組み合わせ)