-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
企業の停滞を打破する「ブレイクアウト成長」
企業の成長は、組織が成熟するにつれて鈍化する傾向がある。企業のライフサイクルに停滞する時期が含まれていることは、研究でも示されている。
とはいえ、それはけっして回避できないものではない。このトレンドに逆らい、筆者らが「ブレイクアウト成長」と名づけたような成長を実現し、それを持続させている企業も存在する。彼らは、同業他社の少なくとも2倍のスピードで5年間売上げを伸ばし続け、続く5年間も業界平均を上回る成長を維持してきた。筆者らは、業績の停滞(売上げが5年間にわたり業界平均を下回る状態)を経験した848社を対象に世界的な調査を行い、その後の10年間で情勢を逆転させた99社を特定した。
このグループに属する企業は多くはないが、極めて優れた力を持っている。彼らは最初の5年間のブレイクアウト成長期に、平均20%近い年間TSR(株主総利益率)を記録。その後の5年間の「持続的成長期」にも、同業他社を大きく上回るリターンを維持していた。
ブレイクアウト成長企業は成熟市場と成長市場の双方にまたがっており、また経済のあらゆる主要セクターにわたって存在している。注目すべきは、ブレイクアウト成長企業が成長のために収益性を犠牲にしていないこと、そして最初の5年間で利益率を平均1ポイント拡大していた点だ。
一方で、当初の5年間はブレイクアウト成長を目指す取り組みが成功し、同業他社を上回る成長を遂げたものの、続く2期目の5年間で成長軌道を維持できなかった企業も144社確認された。2期目の5年間のTSRは2%未満に留まり、停滞からの脱出を試みなかった企業以上に低い数字となった。つまり、ブレイクアウト成長は大きなリターンを得られる可能性を秘めているが、リスクも同様に高いのである。
成功した企業が採用していたのは、製品イノベーション、グローバル展開、事業ポートフォリオの転換など、よく知られた施策だった。ただし、彼らは業界特性や既存の戦略的ケイパビリティといった状況的要件に自社の成長戦略をマッチさせる能力が高いという点で、他社と一線を画していた。また、新たな規制やテクノロジーの出現、投資家からの圧力といった困難な状況を逆手に取って変革の必要性の説得力を高め、ピンチをチャンスに変えた企業も多かった。
事業規模を拡大する
最も一般的な戦略は、中核事業に集中し、生産能力の拡大や新たな地域市場への参入、または競合他社の買収による業界再編によって、市場シェアを大幅に拡大するというものだ。
全体としては、ブレイクアウト成長企業の45%がこの戦略を採用していた。平均すると、彼らはそれ以前のマイナス成長の軌道を反転させ、ブレイクアウト成長期の当初5年間に年16%の売上成長率を達成した。これは同じ期間の年間TSRの16%に相当する。
このアプローチが最も適していたのは、物理的な規模と生産能力が効果的な障壁として機能し続けている競争環境においてだった。そのため、特に工業、素材、公益事業といった資産集約型セクターや、規模がブランド力と流通力の源泉となる消費財企業に広く採用されていた。また、独占禁止法に抵触する懸念を引き起こすことなく市場シェアを拡大できる細分化された市場で、最もうまく機能する傾向も見られた。
最後に、この戦略は人口動態の変容や地政学的変化、経済面の変化などの要因が引き金となって採用され、それが新たな成長のフロンティアを切り開いたケースも多かった。たとえば、筆者らが本研究を行っている期間に中国で中間層の台頭が進み、それがこのアプローチを採用した多くの企業に海外事業拡大のチャンスをもたらした。
この戦略を実施した機器レンタル企業ユナイテッド・レンタルズを例に取ろう。金融危機の後、多くの競合他社は収益性の回復に注力したが、同社は米国の建設業界の回復が近いと考え、業界再編戦略に打って出た。極めて細分化されていた業界で、競合のRSCホールディングスを買収するという画期的な案件を成立させて事業規模を大幅に拡大し、広範で安定した体制を確立したのである。この戦略が功を奏して、同社は加速的な成長フェーズに入り、買収後の5年間で68%の年間TSRを実現した。






