エージェント型AIプロジェクトが失敗する理由と成功の秘訣
HBR Staff/AI
サマリー:エージェント型AIへの投資は急増しているが、ガートナーは2027年までにプロジェクトの40%以上が中止されると予測する。その主な失敗要因として考えられるのが、コストの高騰や技術と課題の不整合だ。成功のカギは、AIの自律性が真価を発揮する複雑な領域を見極め、規律ある導入を行うことにある。本稿では、失敗を回避するための適切なユースケースの選定方法と、リーダーが採るべき5つの具体的アクションについて解説する。

エージェント型AIプロジェクトの40%以上が中止される可能性

 エージェント型AIは、オートメーションや生成AIの単なる焼き直しではない。エージェント型AIシステムは自律的に複雑なタスクを処理し、プロセスを最適化し、機会やリスクを事前に特定することができるので、人間が常に監視する必要性は低い。この自律性のおかげで、企業は変動する市場状況により迅速に対応し、意思決定を向上させ、人間のリソースをより価値の高い活動に割り当てることができる。

 こうしたビジョンは、テクノロジー関係のベンダーと企業のリーダーの想像力をかき立ててきた。ピッチブックのデータによると、2024年第4四半期から2025年第1四半期までに、ベンチャーキャピタルによるエージェント型AIへの投資は265%増加した。

 だが、そうした期待の高さと投資が急増する状況とは裏腹に、調査会社のガートナーは、2027年末までにエージェント型AIプロジェクトの40%以上が中止されると予測している。

 主な理由は、コストの高騰、ビジネス価値の不透明さ、不十分なリスクコントロールなどだ。盛り上がりが過熱するほど、誤った使い方をされるリスクも高まる。その結果、プロジェクトは失敗し、テクノロジーとその提供者への信頼も低下する。ガートナーは、企業はAIアシスタントを導入しているか、エージェント型AIのテクノロジーを用いる十分な機会がそもそもないため、まだ市場が成熟していない状態だと評価する。また、ベンダーが既存の製品を現実の機能に関係なく「エージェント型AI」としてリブランディングする「エージェント・ウォッシング」も横行している。数千社に及ぶ、いわゆるエージェント型AIベンダーのうち、純粋にエージェント型のソリューションを提供しているのは、わずか130社程度だと、ガートナーは推測している。

 ビジネスリーダーは、エージェント型AIを見境なく導入したくなる誘惑を抑え、エージェント型AIならではの能力が測定可能なビジネス価値を生むユースケースに的を絞るべきだ。成否を左右するのは、規律あるアプローチによるユースケースの選択、テクノロジーの成熟度を判断する鋭い眼識、他のAI技術のほうが適切な場合はそれを活用しようとする意思である。

ほとんどのエージェント型AIプロジェクトが失敗する理由

 失敗の最大の理由は、このテクノロジーの能力と目下のビジネスの課題が整合していないことだ。現段階のエージェント型AIモデルは、複雑なビジネス目標を自律的に達成したり、細かなニュアンスを含む指示に継続的に従ったりするほどの成熟度や自律性を備えていない。多くの導入事例は、進化したチャットボットか対話型インターフェースを備えたロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)ツールの域を出ない。ユーザー体験は向上するかもしれないが、投資に見合うだけの変革的な価値の創造には至らないのだ。

 また、エージェント型AIをレガシーシステムや既存のワークフローに統合することは技術的に難しいこともわかってきた。互換性の問題、データの縦割り構造、広範なプロセスを再設計する必要性から、たちまちコストとスケジュールが膨らんでいく。さらには適合性を無視して、エージェント型AIをあらゆるプロセスに組み込みたいという誘惑に負ければ、リソースが無駄遣いされ、収益目標を達成できなくなるだろう。

 その結果として、市場は寸断され、混乱する。企業が本物のAIエージェントの展開に必要なコストと高度な専門知識を過小評価すると、やがて失望し、最終的にはプロジェクトを中止する事態になるだろう。