仕事と私生活の困難が重なった時、リーダーはどう対処すべきか
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サマリー:私生活と仕事の危機が同時に重なると、リーダーは「もっと頑張らなければ」と感じ、過剰に行動してしまいがちだ。真のレジリエンスとは、現実を受け入れ、支援を得ながら回復と実行の仕組みを整えることである。本稿では、私生活上の危機と仕事上の課題が同時に押し寄せる状況でも成果を維持するための、リーダーシップのあり方を示す。

仕事と私生活は密接に関係している

 今日のように不確実性が高い時代には、問題が一つずつやって来ることは稀だ。リーダーには、仕事上の困難に直面しながら、その合間に立ち直って個人的な問題に対処するような余裕はない。むしろ、それらがぶつかり合い、ストレスを増幅させ、判断を曇らせ、あらゆる意思決定の重要性を高める。

 筆者らが協力したCHRO(人事最高責任者)のエミリーにも、それが起きた。彼女は組織再編の最中に、8年続いたパートナーとの関係に終止符を打つことになった。職場では、信頼していたリーダーの退任、業績不振の上級副社長の処遇決定、急成長中の会社の行方を左右する後継者選定といった、重大なリーダーシップの移行に直面していた。家庭では、10代の娘と共に引っ越しを進めながら、共同資産の整理をし、つらい別れを乗り越えなければならなかった。

 リーダーは公にはあまり語らないが、このように私生活と仕事の問題が重なることは、極めて一般的だ。たとえば、米国の労働者の56%が、自宅でのストレスや不安が仕事のパフォーマンスに影響すると回答している。また、職場のストレスは家庭内の対立を引き起こす最も強力な要因の一つだ。課題を押し隠しても状況は改善せず、健康や士気、チームのパフォーマンスを蝕む。リーダーには、その瞬間に実行可能で、なおかつ長期的に持続可能な戦略が必要だ。

 筆者らは、シニアエグゼクティブの支援を通じ(キャスリンはエグゼクティブコーチ兼基講演者として、ジェニーはエグゼクティブアドバイザー兼人材開発の専門家として)、個人的な問題と仕事の問題が重なる状況を、明晰さとレジリエンスを持って乗り越えるための4つの戦略を特定した。

1. 人生は思いどおりにならないものだと受け入れる

 マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によれば、ウェルビーイングに配慮するリーダーは、明晰性、適応力、パフォーマンスを持続しやすい。最初のステップは、自己認識だ。リーダーは、プライベートの自分と仕事の自分を完全に切り離せると考えがちだが、一方の混乱は必ずもう一方に影響し、それを否認すればむしろプレッシャーが増すだけだ。真の安定は、正直さから始まる。

 エミリーもそこを出発点とし、自分がエネルギーが尽きた状態で無理をしていることを認めた。職場では集中力が散漫になり、家庭では感情的に消耗し、いつもの自分らしさを発揮できなくなっていた。それはコミットメントの低下ではなく、人間として当然の反応だ。彼女は無理に挽回しようとはせず、一度立ち止まり、自分を立て直す時間を取った。自分がコントロールできるものは何かを整理し、スケジュールを組み替え、直属の上司、チーム、他部門の関係者に、いつ、どのように情報を共有するかを計画した。

 エミリーはすべての詳細を共有したわけではなく、現実的な期待を設定し、優先順位を守るために必要なことだけを伝えた。その意図的な透明性が、彼女が主導権を取り戻し、信頼を維持するための助けとなった。

 以下を試してほしい。

感情を言語化する:自分が感じていること(疲労、悲しみ、不安など)を明確にすれば、反射的ではなく意図的に対応することができる。

期待を再設定する:いまの状況における「十分よい」の基準を設定する。