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伝統企業で従業員のAIツール活用が進んだ背景
多くの企業では、従業員の抵抗に直面すると、デジタル・トランスフォーメーション(DX)が失敗に終わる。ところが、フランスの酒造大手ペルノ・リカール・グループは、新しいAIツールを活用するよう従業員に慎重に促した結果、自然と賛同が集まった。
この成功に驚いたのが、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の准教授であるイヤボール・ボジノフと助教授のエドワード・マクファーランド三世だ。ペルノ・リカールは200年の歴史を持つ蒸留酒メーカーであり、従業員は伝統的な方法で販売やマーケティングを行ってきた。そのため、AIの導入は大きな反発を招くと予想していたのだ。
AIツールの導入に従業員の賛同を得ることは、「不可能ではないとしても、非常に難しいと思っていた」とマクファーランドは言う。「ところが、大きな成功を収めたと聞いて、嬉しい驚きを覚えた。私がこれまで見てきたテック企業と比較しても非常によい成果を残している」
ワイン・蒸留酒部門で世界第2位を誇るペルノ・リカールによるDXの取り組みは、現代の組織が直面する共通の課題、すなわち先進技術を活用してオペレーションの効率化と収益性の向上を図りたい時、どうすれば従業員を巻き込めるかを考える手掛かりを示してくれる。
「その価値は、実際に使われた時に初めて生まれる」と、ボジノフは言う。「最高のツールでも、誰も使わなければ何にもならない」
スムーズな導入のカギは、従業員の抵抗意識に積極的に対処するとともに、新しいデジタルツールを試すことに及び腰な従業員に教育とサポートを与えることだと、マクファーランドとボジノフは言う。2人は、BCGヘンダーソン研究所(BHI)の元グローバルディレクターであるフランソワ・カンデロン、およびHBS欧州リサーチセンターの研究員であるニコリーナ・イエンソンとエマー・モロニーと協力して、2024年5月にケース"Pernod Ricard: Uncorking Digital Transformation"(ペルノ・リカール:DXのコルクを抜く)を執筆した。
当初は従業員も懐疑的
ペルノ・リカールは、世界70カ国以上に90の生産施設を有するグローバル企業であり、各国の市場に関する専門知識と、伝統的な人間関係重視の販売・マーケティング方法によって成功を収めてきた。従業員は直観に従って、収益性を高めるための方針を決めることも多かった。
だが、経営陣は2020年になると、アナログな方法では、複雑化する商品ポートフォリオを管理できないと感じるようになった。また、DXを実行すれば、営業部門やマーケティング部門がデータに基づいて、より支出効率を向上できるようになると考えた。
そこでペルノ・リカールは野心的なソリューションを生み出した。AIを駆使した4つのデジタルプログラムを開発したのだ。このうち主力は次の2つだった。
・Dスター(D-STAR):機械学習を用いて営業担当者の店舗訪問や商品推薦を最適化するシステム。







