生成AIにより検索流入に期待できない時代、どう生き残るべきか
Illustration by Mario Wagner
サマリー:生成AIの台頭により、検索トラフィックを収益化してきたアグリゲーターのビジネスモデルが根底から揺らいでいる。従来のリンク誘導型から、AIによる直接回答やエージェント機能へとユーザー体験が移行する中、既存企業は単なる情報の集約では優位性を維持できない。本稿では、オンライン旅行業界を例に、AI主導のエコシステムで生き残るために必要な3つの転換を詳説する。

生成AIがオンライン上の情報収集を激変させている

 いまから20年以上前、インターネット経済の台頭は、産業構造を再構築する新しい世代の仲介業者を生み出した。旅行業界のエクスペディアやブッキング・ドットコム、不動産業界のジロウ(Zillow)、人材採用業界のインディードといったアグリゲーター(集約型プラットフォーム)は、既存の流通チャネルを覆し、断片化されていた供給と大量の需要を結びつけるデジタルマーケットプレースを創出した。

 これらのアグリゲーターは、検索トラフィックを広告や取引手数料として収益化することで力を築いた。彼らはウェブのゲートウェイとなり、検索そのものをビジネスモデルに変えて、人々がオンラインで情報を検索し、意思決定する方法をつくり替えた。検索を支配する者が収益を獲得する。これが、検索がデジタルコマースの基盤となった理由である。

 しかしいま、そのモデル自体が試練に直面している。生成AIが、人々がオンラインで情報を取得する方法を変えているのだ。オープンAIのチャットGPTやグーグルのジェミニといったアプリは、単なるリンクの一覧ではなく、ユーザーと対話して直接的な回答を生成する。これらのシステムは他のサイトへのクリック誘導を減らすことで、アグリゲーターが依存してきたゲートウェイの機能に取って代わり、彼らのトラフィックと収益の基盤であるファネルの最上流で意図を捉える能力をむしばんでいる。

 ディスラプションの兆候は、すでにオンライン上に現れている。検索トラフィックに依存してオンライン家庭教師、教科書レンタル、サブスクリプションを展開する教育プラットフォームのチェッグ(Chegg)は、AIツールが学生の質問に直接、回答するようになって以降、訪問数が急減したと報告している。同社はこの減少について、ユーザーが検索結果をクリックして自社サイトに移動することなく、AIのインターフェース内で必要な情報を得るようになったためだと説明する。発見の場がプラットフォームの外に移動した時、価値がいかに急速に流出するかを物語っている。

AIがオンライン旅行業界のモデルを揺さぶる

 オンライン旅行業界は、AIがアグリゲーターのモデルをどのように破壊しうるかを示す、極めてわかりやすい事例である。デジタルの旅行市場はエクスペディアとブッキング・ドットコムが圧倒しており、彼らが運営するプラットフォームで世界全体の予約数の約半分を管理している。

 あらゆるアグリゲーター型プラットフォームと同様に、ここでも規模が極めて重要だ。より多くの旅行者を集めるプラットフォームは、より多くの供給者を呼び込み、供給者が増えるほどそのプラットフォームは旅行者にとって欠かせない存在になる。この規模がアグリゲーターに供給者との交渉力を与え、より有利な条件を引き出し、予約1件当たりから得られる手数料を増やし、サイトの広告料金を引き上げることを可能にする。

 この規模を維持するために、オンライン旅行代理店は検索エンジン(グーグルが世界の検索の90%を支配している)に対価を払って目につきやすい位置を確保し、検索過程の最も早い段階で需要を獲得しようとしている。エクスペディアとブッキング・ドットコムにとって、この戦略は長年の間、ビジネスモデルを形づくってきた。

 マーケティングに最もコストをかけて、検索上の可視性や関連広告に多額の資金を投じる理由もここにある。エクスペディアは2024年に収益の半分以上、約68億ドルをマーケティングに費やし、ブッキング・ドットコムも年間収益の約30%、70億ドル超を同様のマーケティング投資に充てている。

 そしていま、AIがこうした経済構造を混乱させている。グーグルは、AIを活用した検索環境に旅行者をより長く留め、検索結果のページを離れる前から旅行の計画づくりを支援している。消費者も旅行の計画にチャットGPTのようなアプリを活用するようになった。

 これらのツールは、予約を確定させる段階では引き続きユーザーをオンライン旅行代理店に誘導するだろう。しかし、旅行に関する情報収集はアグリゲーターのサイトから離れつつあり、顧客の購買意欲を喚起し、購買に影響を与える機会は減少している。計画の策定がAIインターフェースに移行するにつれ、オンライン旅行代理店が商品をクロスセルする余地は小さくなり、規模を支えるネットワーク効果が弱まる。