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人材マネジメントがシステムとして機能しているか
優秀な人材が定着する企業と、そうでない企業を分かつものは何か。業界や企業規模、予算の違いではない。それは、人材マネジメントがシステムとして機能しているか否かにある。
筆者らは、シンガポールの従業員100人以上の全企業を対象に、約1500社、100万人近い労働者の包括的な行政記録を分析し、この結論に至った。数年間にわたるすべての採用、昇進、賃金の変動を追跡したこの膨大なデータを用い、これらの企業を、雇用における以下の5つの重要な領域に関する12の具体的指標に基づいて評価し、スコアリングした。
・採用
・報酬水準
・昇進
・公平性
・定着率
企業や個人による自己申告に基づく従来の調査とは異なり、このデータセットは労働者のキャリアの推移についての実態を浮き彫りにし、いつ、どのような経緯で離職に至るのかをかつてない精度で明らかにしている。
分析結果が示すパターンは明確だ。同一職種の労働者であっても、雇用主の人材マネジメント次第で残留か離職かの判断は劇的に分かれる。筆者らのインデックスで上位20%に位置する企業の従業員は、下位20%の企業に比べ、1年を超えて定着する確率が2.2倍高く、賃金は3.4倍だった。この差を生んでいるのは外部環境ではなく、企業の選択だ。
たとえば、定着率向上の手段として推奨されることの多い、学位要件の緩和を考えてみよう。これまでは、資格の上で劣っていても門戸を広げて採用すれば、一般的な採用基準に該当しない経歴の人材はその恩に報いて長く働き続けるという議論がなされ、筆者らの過去の研究もその相関を示唆していた。
しかし、極めて詳細な今回の新たなデータは、より複雑な現実を示している。学位要件の緩和による定着率向上の恩恵を受けているのは、一部の企業に限定されていた。要件を緩和した企業の45%では、定期的な採用の後に急速な離職が続く「回転ドア現象」が起きており、高い定着率を実現できているのは22%にすぎない。
同様に、雇用の他の側面で補完的な施策を講じずに競争力のある賃金のみを提供しても、従業員の長期的な忠誠心を得ることはできない。また、透明性のある基準を欠いたまま急速な昇進を推進すれば、むしろ定着率は低下する。
データが明らかにした本質的な現実はこうだ。個々の施策を単独で実施しても、離職率の低下や経験豊富な人材の育成にはほとんど寄与しない。優れた成果を上げている企業とは、必ずしも最も進歩的な政策や最大の人事予算を持つ企業ではない。採用がオンボーディングの能力と整合し、報酬戦略がキャリアの可視性を補完し、昇進が定着を阻害するのではなく強化するような、一貫性のある統合されたシステムを持つ企業だ。
データは、こうしたシステムを構築するための4つの教訓を示している。
門戸を開くにはインフラが不可欠である
スキルを重視した採用は人材プールを拡大させるが、企業の約半数(48%)は、未経験で採用した従業員を平均して1年間も定着させることができていない。体系的なオンボーディングや有能なマネジャーの配置、明確な昇進パスの整備を伴わずに、機会へのアクセス障壁を下げるだけでは、そうした企業の人材不足の解消にはほとんどつながらない。
定着率の高い企業の特徴は、初任給の競争力を維持しつつ、職務経験のある人材の採用に注力している点にある。彼らは、自社のニーズを満たすために能力が実証されていない未経験者に頼ることはしない。
スキル第一主義の本質とは、学位の有無にかかわらず実証済みの能力を持つ人材を獲得するための新たな手法を見出すことであり、基準を下げることではない。スキル重視のアプローチの恩恵を得るためには、補完的な採用と報酬の施策を実施することが不可欠だ。特に、定着率が高く、採用の障壁の低い企業は、年齢の高い労働者の採用と定着においても優れた成果を出しており、これは広範な施策の一貫性を示す指標となっている。
賃金は最低条件であり、解決策ではない
初任給の高さと1年目の定着率の間には、42%という相関が見られるものの、その影響力は時間の経過とともに劇的に減退する。継続的な昇給と長期的な忠誠心との間には、わずかな相関しか認められない。
人々を特定の企業につなぎ止める真の要因は、その人の専門性が認められ、昇進への道筋が透明性をもって示されていることだ。この2点は、長期的な定着率と極めて高い相関関係にある。
公平性を欠く昇進は逆効果となる
昇進の可能性が高いだけでは、長期的な定着率との間に、せいぜい弱い相関しか生まない。透明性の高い実力主義に基づかないまま急速な昇進を推進する企業では、優秀な従業員は出世するのと同等の速さで会社を去る文化が形成される。
対照的に、昇進と報酬における性別の平等性が中央値に近づいている、つまり男女格差が少ない業界ほど、定着率とキャリアの流動性の両方が高くなる。これは、公平なシステムが、パフォーマンスを制約するのではなく補完することを示している。
経験が乗数効果を生む
年齢の高い労働者の定着と内部からのリーダー育成の両方に秀でた企業は、全体の定着率においても高い数値を達成する確率が55%ポイントも高い。
経験豊富な従業員が留まることで、若手社員は安定が体現されるのを目にして、中堅層が厚くなるとともに、企業のナレッジベースが深化する。結果として、リーダーシップのパイプラインが有機的に成長していく。
* * *
上記の結果は、すべての優良企業が同一の戦略に従っていることを意味するわけではない。垂直的な昇進を通じて深い専門性を構築する企業もあれば、横断的な異動を通じて専門性の幅を広げる企業もある。あるいは、人材を非常に効果的に育成し、その結果として元従業員の活躍が自社の評判を高める企業もあるだろう。しかし、これらの企業には重要な共通点がある。内部の一貫性だ。そして、この一貫性こそが、語られることは多いが定義が曖昧な「企業文化」を生み出すのかもしれない。
人材が定着する文化は、ミッションステートメントや孤立した施策から生まれるものではない。中核的な人事慣行が整合し、採用モデル、賃金体系、昇進理念——それらがどのようなものであれ相互に補強し合うシステムによって形成される。あらゆる業界の大小さまざまな企業で働く100万人の労働者から得られたデータが明らかにしているように、競争の激しい経済環境下において、従業員はその一貫性に対して極めて高いレベルのコミットメントを示すことで応えるのである。
"Policies Aren't Enough to Retain Top Talent. You Need Systems.," HBR.org, January 20, 2026.







