企業の「テクノロジー観」が競争力を左右する
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サマリー:テクノロジーを単なる効率化の「ツール」と見るか、組織内で自律した「役割」を担う存在と捉えるか。この認識の差が、企業の競争力を決定づける。モバイルインターネットやLLMの進化により、技術は今や組織変革を主導する社会的な役割を担うまでに至った。本稿では、中国企業2社の比較事例を通じ、テクノロジーへの向き合い方が組織構造や協働のあり方、マネジャーの役割にどのような劇的変化をもたらすのかを詳述する。

テクノロジーは「ツール」か、それとも「役割」か

 リーダーとマネジャーは従来、テクノロジーを業務遂行の効率化に役立つツールや機能として扱うことが多く、業務の本質を根本的に変えるものとは捉えてこなかった。たとえば、メールはより迅速なコミュニケーションを可能にする。サプライチェーン管理(SCM)システムは、サプライチェーンのコストを減らし、納品サイクルを短縮し、製品が顧客に迅速かつ正確に配達されるようにする。

 しかし、この見方はますます時代遅れになりつつある。近年では、組織を形づくるうえで、テクノロジーの役割は革命的な変化を遂げている。

 筆者らの研究によれば、2010年代のモバイルインターネットの台頭以降──とりわけ過去3年の間に大規模言語モデル(LLM)が進化する中で──テクノロジーは組織変革において、より深く、より社会的な「役割」をますます担うようになっている。そして組織構造、協働、オペレーションのメカニズムに著しい影響を及ぼしているのだ。

 筆者らは最近の研究の中で、「ツール」と「役割」のアプローチを比較し、それぞれが企業の技術活用にどう影響を及ぼすのかを検証した。具体的には、モバイルインターネットの急成長期における中国の2つのオンライン・トゥ・オフライン(O2O)プラットフォーム企業に注目した。それぞれをT(tool)社、R(role)社と呼ぶことにしよう。

 2社は多くの点でよく似ていた。社歴はそう変わらず(前者は2014年、後者は2015年に創業)、評価額10億ドルを達成し、従業員数はピーク時で3万~4万人に及んだ。政策環境、市場環境、事業範囲、発展段階、組織構造にも共通点がある。そして両社ともテクノロジープラットフォーム(主に業務やマネジメントのシステムを含むITシステム)を活用し、従来のビジネスモデルに破壊的変化をもたらした。

・T社はIT技術を通じて従来の生鮮食品のサプライチェーンに革命をもたらし、販売業者と最終消費者の両方にサービスを提供している。

・R社はIT技術を用いて自動車売買のプロセスを変革し、新車・中古車の販売業者と最終消費者をマッチングするサービスを提供している。

 両社が大きく異なっていたのは、リーダー陣によるテクノロジーの認識と位置づけである。それが結果的に、異なる組織構造と業務慣行につながっていた。

 T社のリーダー陣はテクノロジーを、補助的な役割を果たすツールまたは機能と見なし、既存の業務およびマネジメントのプロセスをオンラインに移行するのみに留まっていた。R社のリーダー陣は、テクノロジーを独立した社会的「役割」として位置づけ、オペレーションとマネジメントに統合し、ビジネスモデルと基準の再構築を目指した。

 この2社におけるテクノロジーの導入、理解、活用のあり方が、組織構造、従業員による協働の相手と方法、そしてマネジャーが担う役割に影響を及ぼすことになった。