チェンジリーダーが古参社員に同調し始めたら、どうすべきか
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サマリー:CEOや経営陣は、変革を期待して大胆なリーダーを採用するが、強力な既存システムや不文律の圧力が、彼らを次第に「現状維持」へと同調させてしまう傾向がある。こうした消極的な姿勢は、能力不足ではなく、心理的安全性が欠如した環境への合理的な自己防衛反応である。リーダーの孤立を防ぎ、本来の力を発揮させるには、構造的な支援と環境の再整備が不可欠だ。本稿では、CEOがこの停滞を察知し、期待値を再設定して変革を成功に導くための戦略を紹介する。

チェンジリーダーが「現状維持の波」に飲み込まれてしまったら

 戦略的な賭けに出て現状を打破するために、大胆なリーダーを採用したとする。しかし、CEOあるいは経営幹部であるあなたは、変革を期待されたはずの彼らが、既存のシステムに押し潰され始める光景を目の当たりにする。

 こうした状況は、たいていの場合、個人の問題ではなくシステムの不全に原因がある。権威ある研究によれば、外部から加わったリーダーは、たとえそれが本来の役割に反するものであっても企業の不文律に適応しなければならないという強い圧力に直面するという。躊躇しているように見える行動は、自己防衛のための合理的な反応であることが多い。

 こうしたリーダーは、構造的なサポートがなければ、孤立していく。システムは彼らを移植された新しい臓器のように拒絶し始め、変革のために招聘した人物が、皮肉にも、打破すべき文化を強化する結果に終わってしまう。

 筆者のクライアントである大手ヘルスケア企業のシニア・オペレーション・エグゼクティブの「シェリル」は、まさにこのような体験をした。同社のCEOは、シェリルのコーチとして筆者を起用したいと連絡してきた際、こう説明した。「シェリルはプレゼンス(指導者としての存在感)に関するコーチングが必要だと思い込んでいるが、私にはプレゼンスに問題があるとは思えない。彼女が自己検閲しているように見える」

 CEOによれば、彼女は仕事を始めた当初は大胆だったが、時間が経つにつれ、発言が控えめになり、古参の同僚に譲歩するようになった。シェリル自身も何かが変化したことを認め、一歩引いてシステムがどのようなシグナルを発しているのかを検証する機会を快く受け入れた。

 シェリルの能力が低下したわけではなかった。彼女は、自分を取り巻く「実際の」インセンティブや暗黙のルールに、より敏感に同調するようになったのだ。

 経営幹部を対象としたエグゼクティブコーチングやチームコーチングに携わる中で、筆者はこうしたパターンを繰り返し目にしてきた。組織は変革を推進するためにリーダーを招き入れるが、構造的なサポートや心理的なサポートがなければ、いかに優秀な人物でも現状維持の波に飲み込まれてしまう。本稿では、CEOや経営幹部がこうした事態を察知し、期待値を再設定し、リーダーが変革を推進して成功するために必要な環境を整えるのに役立つ戦略を紹介する。

1. チェンジリーダーが消極的になっている理由を特定する

 介入する前に、リーダーがどのような状況にあるのか、具体的に理解しなければならない。有望な人材が大胆な行動を控えるようになった時は、能力や自信の欠如に原因があることは稀で、その環境に潜む見えないリスクに対する合理的な反応であることが多い。ほとんどのリーダーは突然慎重になるのではなく、微細なサインや制約に適応していく。シェリルには初期の警告サインが現れており、攻めではなく守りの姿勢に転じ、会議での発言が減り、意見を和らげ、古参の同僚にすぐ譲歩するようになっていた。

 この変化を理解するため、シェリルの上司であるCEOは「フォースフィールド分析」を提案した。これは、緊急性や初期の勢いといった推進力と、旧態依然としたパワーダイナミクス、心理的安全性の低さ、アライ(理解者、支援者)の不在といった抑止力を比較するものだ。そして、一つのことが明確になった。シェリルは能力を失ったのではなく、システムに適応しようとしていたのである。

 次のステップは、リーダーが日常的にどのような経験をしているか、表面化させることだ。システムのシグナルを把握し、それがどのように行動を形成しているかを理解しなければならない。