-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
AI導入で既存企業が新興企業に後れを取っている
AI導入の難しさに、多くの既存企業が焦燥感を募らせている。こうした企業は、既存のワークフローにAIを組み込み、個々のタスクを自動化し、新たな生産性向上ツールを採用するなど、テクノロジーを幅広く展開している。それにもかかわらず、小規模な新興企業に後れを取っている。
これはよく見られるパターンだ。有望なテクノロジーが登場し、既存企業が多額の投資を行い、合理的な戦略を明確に打ち出す。しかし、結果として漸進的な効率性の向上に留まり、最終的には小さな新興企業に優位性を譲り渡してしまう。
既存企業がこのように行き詰まると、経営陣は実行力不足を責める傾向がある。スキル不足、技術革新に後れを取る研修、中間管理職の惰性といったよくある課題を指摘する。しかし、それらは都合のよい解釈にすぎず、説明になっていない。問題はそこではなく、既存企業が失敗するのは、新しいテクノロジーが仕事の連携のあり方を刷新できることを認識していないからだ。
たとえばAIは、知識労働を細分化し、迅速に完了させ、新たな方法で再構成する。既存企業がAIを効果的に活用できずにいる場合は、たいていは既存の役割やプロセスを効率化するためにその機能を利用しているに過ぎない。同じ仕事を少し効率的に行っているだけなのだ。しかし、より大きな機会は別のところにある。
企業はAIを活用して、チーム間の業務の分担や順序、連携といった仕事の組み立て方を再構築することができる。これを行うと、緻密で達成可能に見える戦略であっても通用しなくなるものもあるが、同時に、新しい戦略が可能になり、それらこそが競争優位の源泉となる。
フィグマ vs. アドビ
共同編集デザインプラットフォームのフィグマがこの10年で台頭したことは、製品の機能や実行力の問題以前に、新たな連携のアーキテクチャがいかに戦略的成果を決定づけるかを示している。
デザイン業界を牽引してきたアドビは、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の成功モデルとして広く目されている。2010年代初頭、クラウドベースのテクノロジーが登場すると、アドビはパッケージソフトのモデルを捨て、サブスクリプションモデルへの移行を成功させた。従来の基準から見れば、同社はまさに先進的な既存企業が取るべき行動を忠実に実行した。
だが同じ時期に、当時は小規模な競合相手だったフィグマは、チームのコラボレーションと意思決定の方法を塗り替える共有デザインの環境を構築した。それはアドビには対抗できないものであり、最終的にアドビが2022年に200億ドルで買収を試みるほどの大きな戦略的脅威となった(買収は、欧州と英国の規制当局による1年以上の調査を経て、撤回された)。
フィグマの成功は、リアルタイムの共同編集、ブラウザベースのアクセス、迅速なユーザーオンボーディングといった優れたユーザーエクスペリエンスが理由だと一般的に考えられている。しかし、アドビも同様の機能の多くを構築していた。フィグマの優位性の真の源泉であり、両社の明暗を分けたのは、それぞれがデザインワークの本質をどう理解し、その理解に基づいていかに組織を構成したかにあった。
アドビは、デザイナーが個別にファイルを編集し、それを受け渡し、後で変更を統合するという、古いモデルに縛られていた。このモデルでは、クラウドは保存と配布の利便性は高めたが、ファイルベースの作業と逐次的な編集スタイルは残り、それが顧客企業のワークフローやチーム構造を形づくる前提となっていた。作業の連携には、バージョンが異なるファイル間での変更箇所の管理や調整が不可欠だった。







